「梁」90号を読む  ~中村雅俊は暗算が得意、ほか

「梁」90号。
「現代短歌・南の会」が出している本。編集後記には、結社誌でも同人誌でもないと書いてある。


喉渇く抱かれたくなる雨降らす 罪深い順に並べ変えなさい/松村由利子「島の名のように」


にっぽんの漫画の歴史全集を腹に抱えて子らのよろめく/矢澤麻子「子供会廃品回収」

→タイトル通りのことを丁寧に描いている連作。様子が浮かんでくるようだ。
引いた歌は、廃品回収の風景と違う意味合いがありそうにも見えて、そこをおもしろく読んだ。


何らかの機器が発するかすかなる音を聞きつつ鶴を折る夜/生田亜々子「果てへと続く」
→生活のなかにいろんな機器があって、なにか音がしててもどこからきているかわからないことはある。静かであると同時に現代的だ。
鶴を折るのには祈りがこめられていたりする。現代にもそうしたことが生きている。


古くなり切れて久しき電球の下通るたび念力ためす/河野裕子『季の栞』

何でい、へつちやらでい ガワガワの外皮立てゐるキャベツの畑/河野裕子『庭』

夢の中はもつとさみしい 工場のやうな所で菊の世話して/河野裕子『季の栞』


大森静佳さんの『河野裕子の歌鏡』が今回もよかった。「没入感覚の変容」など興味深く読んだ。物のなかに入り込むとか、力を抜ききって身を任せるとか、ものがしゃべりだすとか。



板の上に一本一本曲線のまことにちがふ貝割れ大根/大橋智恵子「霧を吹く」


簡潔の音ひびかせて夜の蚊を打てば双の手じんと痛かり/倉岡たか子「秋桜」

→漢語の多い方だ。「簡潔の音」が気に入った。


神の業ならねばすこし痛ましき待合室の犬系統図/内藤明『虚空の橋』


昼風呂に浸りてをれば壁の面(も)に宇宙よりきし光があそぶ/志垣澄幸「生きる」


帰りきし妻の買物袋にはわれの食べたき蜜柑はあらず/志垣澄幸「生きる」

→かわいい。子供みたい。


秋空が雲を浮かべる下に立つ中村雅俊は暗算が得意/名嘉真恵美子「黒雲」
→なんともすごい飛躍だ。暗算が得意だけど、暗算してるところではないだろう。いや、してるのか?
もしかしてそういうドラマや映画があるのかもしれないが、ないものとして楽しみたい。


「ゆふべあつた『ためしてガッテン』で言つてゐた薬を下さい」と言ふ人のあり/長嶺元久「応召義務」
→この方はお医者さまらしく、病院や患者のさまざまなことが描かれている。
薬の名前を覚えないのも困るが、テレビで見た薬を飲みたがるのもどうなのか。


わが医院のトイレットペーパーどなたかにきのふ誘拐せられたりけり/長嶺元久「応召義務」
→盗難を誘拐としているのもそうだが、犯人に「どなたか」と丁寧に言っているのがユニークだ。患者相手ならば丁寧にもなる。
「せられたりけり」と大きくしめた。



以上です。
んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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