「未来」2016年4月号を読む  ~あっけらかんという程でなく、ほか

「未来」。2016年4月号。


あっけらかんという程でなく遮断機が茜の空に揚がりて揺れおり/前川明人
→あっけらかんという程ではないのに一度「あっけらかん」という言葉を出しているからイメージに変化がある。そのへんはよく「花も紅葉もなかりけり」の歌を引き合いに出して説明されることだけど。

見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮/藤原定家
http://manapedia.jp/m/text/2099



グラブルとは何の意ならむ若き等の片仮名言葉に取り残されて/川井恭子
→グランブルーファンタジーです、と言ったところで取り残された方が追い付くことはできないだろう。距離が大きい。


たまきわるいのち三つが自転車の一台に乗る冬の朝(あした)に/中川佐和子
→子供二人と母親だろうと想像した。「たまきわるいのち」や「冬の朝に」が日常のヒトコマに力を与え、詩にしている。


性質(たち)の悪い男みたいなSNSと聞けど幾らか羨しくわれは/飯沼鮎子
→その比喩、ありそうだけど聞いたことはないなあ。オレはツイッターにべったりだ。ツイッターから離れていく人を何人も見てるけど、彼らは真面目にちゃんと生きてるように見える。
一緒にいてラクで楽しいほうがタチ悪いのかもなあ。


歯ブラシの硬めを選ぶ夕暮れのドラッグストアー 亡霊に遭う/本多順子
→結句の飛躍が印象に残った。歯ブラシやドラッグストアーに注意を向けているところに亡霊がくるから、ぎょっとする。


牛乳のパックに五頭のホルスタイン進みくるがに描かれており/嶺野恵
→静かに怖い。時間を置いて見るとこちらに近づいていそうだ。牛乳を飲むのは別に牛に恨まれるようなことではないけど。


花園の催眠術師とかけまして既に満たされましたと解きます/佐藤羽美
→この形だと「そのこころは」と合いの手を入れたくなるが、ぴったりくる言葉が思い付かない。
花園と眠りはわりと近い。布団によく花がたくさんデザインされている。


わたくしを忘れてしまった顔をするちひさな声でできてゐる雲/大西久美子
→声から雲への飛躍がおもしろい。よく漫画で声が吹き出しになっていて、それが雲に似ているのを考えた。
かつては見知っていたのに忘れられてしまったと。確かに雲は同じものが形を変えて何度も巡っているんだろうね。


社旗おろすたび言い聞かす風がある風があるから靡いてもよい/井元乙仁
→当たり前のことのようで、なにか深いことが隠されているように思えてならない。でもそれが何かはオレにはわからない。



最後には夕日の色を混ぜて黒美術部員はみずを捨て去る/森本直樹



ニッポンのニートがローン組む真昼ラッセンの開けるドン・ペリニヨン/笹公人『念力ろまん』

→対照的な二人だ。カタカナがたくさんでてきて、それがしりとりみたいに響きでつながっているのが面白い。
ニッポンとニートは「二」が共通している。「ニート」と「ローン」は「ー」が共通、といった具合に。下の句では「ン」で畳み掛ける。



ずうるりと赤子のように取り出すよ洗濯機からきみのパジャマを/鈴木美紀子


マッキーの細いの太いの両方のキャップを同時に捨てる覚悟で/小坂井大輔

→ワイルドだなあ~。スギちゃんを思い出して言ってみた。
インクがなくなるまで一気に書こうというのか。後戻りはできない。停滞は干からびて死ぬことを意味する。かなりの覚悟だ。


もう一度考えさせてくださいとチラシの裏に書いた円形/戸田響子
→一方こちらは覚悟ができずにいる歌を選んだ。
電話しながらペンで何か書いてしまうことがある。よく見たら電話だとは書かれていなかったが、そう読んだ。心のなが図形化されているようだ。


夜想曲奏でむとして一面の瓦礫の隅におく譜面立て/三輪晃
→瓦礫と夜想曲というと、映画「戦場のピアニスト」を思い出すが、よく考えたらあれは夜想曲ではなくバラードを弾いてたんだった。それにピアノに譜面立ては必要ない。
楽器がわからないところに想像の余地がある。
想像の余地っていうか、特定の楽曲の演奏ということではなくて、もっと抽象的な意味合いをもってくる。


小走りに過ぎゆく日々の足音にピアノの音を加へてみたり/おおた楽
→今度こそピアノの歌。これも、どんな曲調なのかわからない。「小走りに過ぎゆく」からそれを想像してみる。


高窓へ伸びた光のひとすぢに手を翳すとき「否」と思ほゆ/折木仁


(ああこれはTweetするのにふさわしい)淡く染まりしオレンジの雲/魚虎サチ

→わかるわかる。ちょっと珍しいものやきれいなものを見ると、撮影してツイートすることを考えてしまう。「ああ」に実感がこもっている。


わが心にさみしさあるをスーパーにナスやトマトはかがやきてをり/清水泰子



以上です。五月号がくるまでに急いでやりました。


オレが未来に出した短歌こちらにまとめてある。

歌人・工藤吉生が作る『未来』の短歌とは?
http://matome.naver.jp/m/odai/2145087691179204501






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500円で読める有料マガジンやってます。
「短歌をつくるときに」 https://t.co/9Jd0QOHTW0
今回は、短歌をつくるときの自分なりの心構えを書きました。



んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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