中村憲吉『しがらみ』を読む  ~畳を甜めつつあそぶ、ほか

筑摩書房「現代文学大系68 現代歌集」の10回目。

中村憲吉『しがらみ』。
大正6年から10年までの短歌が収録されている。


忘れたる昼餉(ひるげ)にたちぬ部屋ごとに暗くさみしき畳(たたみ)のしめり/中村憲吉『しがらみ』


みどり児のしづもる見ればわが胸のシヤツの釦(ぼたん)を抓(つま)みつつ居り/中村憲吉『しがらみ』

→おもしろいふしぎなところに着目していると思って丸つけたけど、母親にすることを父親にしているという歌かな。


雨かぜの音に眠らざらむみどり児の起きて畳を甜(な)めつつあそぶ/中村憲吉『しがらみ』
→子供がへんなことしてる歌によく丸つけてるんだけど、飽きることがない。
「雨かぜの音」と組み合わせるとまたあらたな印象がある。


雨ながら人の負ひ来し俵には背なかのぬくみなほのこりたり/中村憲吉『しがらみ』


大(おほ)きなる声ひとつだに挙(あ)げずして心さみしき秋は過ぎにき/中村憲吉『しがらみ』

→大声をあげないことを言ったことで、声がきこえてくるということがある。秋に大きい声をだして、それでさみしさがどうなるのだろう。叫びたい思いが内側にあるのか、などと想像する。


いさかへる二人(ふたり)のこゑの木魂(こだま)して秋山(あきやま)のひよりしづかなるかも/中村憲吉『しがらみ』


冬山の春にむかふを一人(ひとり)して見んとおもふに来つる君かも/中村憲吉『しがらみ』


酒買ひに朝早くより来る子あり徳利(とくり)を抱きて震へたるあはれ/中村憲吉『しがらみ』

→「地主で醸造業を営んでいた」と手持ちの事典にあるので、そのへんが関係しているのだろう。さっきの俵の歌もそうかも。


梅雨(つゆ)ぐもりふかく続けり山かひに昨日(きのふ)も今日(けふ)もひとつ河音(かはおと)/中村憲吉『しがらみ』


うぐひすの稚(わか)くこもりて啼く山の芽吹かぬ谷を人写すかも/中村憲吉『しがらみ』

→絵にうつらないものを歌で写している。


いち枚の葉書をかきて終へぬ間も濡れ屋根かわく日に照りながら/中村憲吉『しがらみ』
→書かれてゆくハガキと、かわいてゆく屋根がおもしろい対比をつくっている。まるで因果関係があるみたいだ。



この歌集おわり。読んでるときはあんまり印象には残らなかったが、こうしてみるとさすがオレの選んだものだけあり、オレにはおもしろい。

いつものことだけど、耳に聞こえる歌と子供の歌をとくにおもしろく読んでいる。


んじゃまた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

最新記事
リンク
月別アーカイブ
フリーエリア
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR