渡辺順三『貧乏の歌』を読む  ~われはきたなき労働者なり、ほか

歌集。「筑摩書房 現代文学大系68 現代歌集」の9回目。
渡辺順三『貧乏の歌』。

一行書きで始まって、啄木みたいな三行書きになって、また一行書きになっておわる。
啄木っぽさがとても気になるが、違うのは労働の歌がとても多いこと。


流れ入る月の光の冷々(ひえびえ)と胸にしむとき死思うとき/渡辺順三『貧乏の歌』
→オレに○をつけさせたのはなんだろうと考えてみると、調子の良さかなと思う。上の句だと「の」とか「ひ」、下の句だと「とき」とかの繰り返し。


花赤き夕日の窓に一人居ればかすかに街のどよめき聞こゆ/渡辺順三『貧乏の歌』
→近くにあるであろう目に見える花と、遠いであろう聞こえるどよめきが立体感をつくり出している。
自分一人と、どよめきをつくる大勢、というのもある。


貧しければ明らさまなる街の灯をさけて木かげをゆくさびしさよ/渡辺順三『貧乏の歌』


心からわが職業をよろこぶ日
遂に来らず
 死をば思えり
/渡辺順三『貧乏の歌』


われはきたなき労働者なり──
 むすめ! むすめ!
 顔をそむけよ
/渡辺順三『貧乏の歌』

→啄木っぽいけど、定型を揺らしてくるところもある。


大方の──
吾が思い出の灰色に
似たる夕べの空の色かな
/渡辺順三『貧乏の歌』

→思い出が灰色というところに苦しみがうかがわれる。そんな色の空のしたにいる現在も、やはりいいものではないのだろう。


みんな
黙っていて呉れ、ものを言うと
泣き出したくなる俺の心だ
/渡辺順三『貧乏の歌』


ひび入れる瀬戸のうつわのはかなさを心に持ちて堪うべくもあらず/渡辺順三『貧乏の歌』

→という歌でこの歌集はおわっている。

どうしても三行で書くと啄木と比べられるのは避けられないだろうな。比べると、この人は仕事のことが多くて真面目だ。やり方を何度も変えながら試行錯誤しているのが見える。

ほかにも良さそうな歌はいくつもあって丸つけたけど、啄木をちゃんと探したら同じ内容の歌がありそうで取り上げづらかった。


働けど──
働けどいつも貧しく
まことに母も養えぬ子は
/渡辺順三『貧乏の歌』

という歌と啄木の例の有名な、手を見る歌とを比べれば、性質の差がよりあらわになるだろう。
この本終わり。



んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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