「短歌研究」2016年3月号を読む  ~ここより地上の色湧き出づ、ほか

短歌研究 2016年3月号。4月号がでる前にやる。


金色(こんじき)のアルトサックス並び立ちケースのなかに菩薩のごとし/大滝和子「空間日記」
→今回とても良かった。
「こんじき」が菩薩に自然にかかってるんだろう。「きんいろ」ではだめだ。


オレンジの香り漂う空間の一部はわれの呼吸となりぬ/大滝和子「空間日記」


「ビスケット詰めほうだい」のネオン照りビッグバンを思わす菓子屋/大滝和子「空間日記」

→「ほうだい」がひらがななのは、子供向けなのか。でも「詰め」は漢字だしなあ。
詰めるにもすぐに限界がくるし、宇宙のようにはいかない。ビッグバンを思ってみても、オレはものすごく抽象的なさましか思い描けないが、どんなビッグバンを思ってるんだろう。




今回は「現代代表女性歌人作品集」ということです。見ていきましょう。
笑いとユーモアがテーマで、それに関する一首とエッセイもある。


赤が流行(はやり)と世間がいへば早々と赤き服着て現はるる人/尾崎左永子「火の雲」


となり家の防空壕の闇の中で祈りてゐたりその時だけの神/出井洋子「逃げる」


店頭(てんとう)に蜜柑うづたかく積みかさなり人に食はるる運命が見ゆ/齋藤茂吉『つきかげ』


不思議なる鶏冠(とさか)の紅のぎざぎざと塀の隙からみつめていたり/長澤ちづ「初春(はる)のことぶれ」

→「塀の隙から」がいい。とさかへの恐れがあるのか。
そんなふうに何かを見つめた記憶があったろうかと思い出してみると、だいぶ古い記憶がでてきた。その古さが歌にかさなった。


思いのほか量感のある尻なりきある日わたしに止まりし鴉/佐伯裕子「春はカラスも」
→カラスの尻とは、なんとおもしろいめずらしい題材か。「思いのほか」というと、思っていたカラスの尻があるようで、ひそかにおもしろい。


向き向きに人びと坐り卓ならぶ雨ふる路地をかたへに置きて/阿木津英「ガラスの壁」
→絵画みたいだと思った。遠近感のとぼしい絵だったら、路地がテーブルの横に置いてあると見えそうだ。


逢いたがる心を風に遊ばせて庭の檸檬をみな ぎにけり/江副壬曳子「水鳥」
→さわやかでとてもいい。心が浮き立ってくる。
「もぐ」が変換できなかった。


水際に立てばすぐさま押し寄せる鯉の貪欲にんげんに似る/小島ゆかり「海から来たわたしたち」
→出てくる鳥や魚がみんな人間と重ねられている一連。



ここより地上の色湧き出づとおもふまで椿は咲きぬ朝のバス停/米川千嘉子「出会はぬままに」

病みたればながき夜にて大雪の無音ふくらみゆく中にをり/横山未来子「さきはひ」

→色が湧いて出るとか、無音がふくらむとか、そういった表現を楽しく読んだ。現実を超えているようで、よくわかるようでもある。


ごみとして連れていつてもらふことも叶はぬ今朝のつめたき手足/田口綾子「連れていつてもらふ」
→7首あるがみんなごみの日に連れていってもらうことだけを言っている。
なんでそんなことを願っているのか気になるが、まったく語られず、匂わされもしない。いっそ清々しいくらい。


ラ・フランスわがために く鼻歌に田中真紀子の声のかぶさる/小黒世茂『猿女』
→田中真紀子なんてしばらく見かけないが、声はよく思い出すことができる。
しかしなんだろうねこの鼻歌と田中真紀子とラ・フランスの重なりは。何か意味をつけたくなるが、みんな弾き返される。よせつけない。


くずおれて床に臥すときワックスの塗りそこねたる荒涼が見ゆ/沖ななも『白湯』


一方を沈めなければ上がり得ぬシーソーといふ浮世の遊具/田中あさひ『とりがなくあづまの国に』


説明は省くのがよい蟹缶は高く高く積むことができる/ 瀬一誌

→これも安易な意味づけを寄せ付けない歌。カニなのはなぜなんだ、なんで高く積むんだと、問うてもしかたない。もう、見上げるしかない。高いなあ。

朝まで生テレビで、
「量は質を変えるんですよ、このコップの水は、一杯なら人の喉を潤しますが、一億倍になれば人を飲み込むんですよ」と言っていた出演者がいた。よく思い出す言葉だ。

そのように、重ねることに意味がない缶詰でも、高く高く積み上げれば、いやそれでも意味とかはないかもしれないが、一種の印象を呼び起こすことはできる。
そういえば缶のならんだ有名な絵画があったな。







オレの短歌研究詠草は2首。1月号から2首がつづいている。永田和宏選。


コンビニに入って出たら傾いている太陽だおい待ってくれ/工藤吉生

呼ぶための声だとすればこのカラスさっきからずっと無視されている/工藤吉生



うたう★クラブは佳作★。加藤治郎選。

文語にしかない味わいはおみくじの〈待ち人来たらず〉〈信ずべからず〉/工藤吉生



おみくじ引いたらそう書いてあったんですよ。



以上です。んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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