「現代短歌」2016年3月号を読む  ~人間のその最大のかなしみ、ほか

現代短歌2016年3月号。



石川啄木の特集があった。写真のページがいいなあ。
「石川啄木の恋文相手 実は男性」の新聞記事を特におもしろく読んだ。

それから松村正直さんの「かすめるもの、よぎるもの」の
「人生は連続した時間の流れではなく、無数の「一瞬」の集まり、点滅する光の連続のようなものなのだ」というのが印象に残った。啄木を読むうえで覚えておきたい。



笑ふにも笑はれざりき──
長いこと捜(さが)したナイフの
手の中(うち)にありしに。
/石川啄木

→ありそうなことだけど、それがナイフであることが、ただの笑いではないふくらみを持っているのだろう。



手套を脱ぐ手ふと休(や)む
何やらむ
こころかすめし思ひ出のあり
/石川啄木


何(なん)となく、
自分を嘘のかたまりの如(ごと)く思ひて、
目をばつぶれる。
/石川啄木


人間のその最大のかなしみが
 これかと
ふつと目をばつぶれる。
/石川啄木


何故(なぜ)かうかとなさけなくなり、
弱い心を何度も叱(しか)り、
金かりに行く。
/石川啄木


というような歌に印をつけていた。啄木のパターンと、オレの丸つける歌のパターンの重なりを見る思いがする。
つまり、心の中のことと実際にしている動きを一首のなかにおさめている。結句に現実の動きがくることが多い。

思い出、自分の嘘、最大のかなしみ。ふときざしたそれに対して、とっさにすることはほんの小さな動きだ。

「何やらむ」「何となく」「これかと」と、もやっとした感覚がある。
きまぐれに心に何かがうかんできて、肉体がわずかに反応する。体と心、そのあいだに不可解な「何やらむ」などがはさまっている。


おそ秋の空気を
三尺四方ばかり
吸ひてわが児(こ)の死にゆきしかな
/石川啄木


また啄木を読み返してみたいなあと思った特集だった。
いつも読み返せるように手のとどくところに文庫があるんだけど、なかなか読み返せずにいる。


啄木特集はここまで。




ひとかじりが何であらうといふやうにあまりにきれいな痕(あと)アップル社/今野寿美「天文台通り」


往還を過ぎ行く人の咳一つ潮時(しおどき)にして立ち上がりたり/泉田多美子「潮時」


監視カメラにまもられて子供らが検索をするハルノナナクサ/魚村晋太郎「種子」

→子供が検索エンジンを使いこなす時代になったんだなあ。春の七草を知らずに調べているのが子供らしいと言えばそうだけども、大人にきくか図書室に行けばわかりそうなことではある。
まもってくれるのが監視カメラだし、人のつながりがなくなっていってるなあ。春の七草のカタカナ表記も冷たい。






「読者歌壇」の「秀作」にはいった。三枝浩樹さんの選。


シロナガスクジラのようなかたちして夕暮れをゆくゆったりの雲/工藤吉生

【評】
既視感のある歌であるが、それでも共感できる。全体がゆったりとしたリズムで、歌われている内容にふさわしい。


秀作になったのは今回が初めて。
初めて「現代短歌」の読者歌壇に佳作で載ったのが2014年9月号なので、一年半、18ヶ月かかって秀作に上がったことになる。

特選が3首、秀作が20首、佳作が約100首。それ以下の載らない歌もある。123首のうちの23首以内。上位19%以内か。






最近更新したもの。


工藤吉生の「#わたしの好きな短歌100」 【2016年版】 - Togetterまとめ https://t.co/gmubYuY1jN

完成しましたのでご覧ください。今のオレに百人一首を作らせるとこういうものができますよというものです。複数の歌を選んでいる歌人もいて、よく数えたら100人じゃなくて82人でした。
まあとにかく、知ってる限りの短歌から100首を選びました。




気持ち悪いプリクラのこと https://t.co/7pScBJJj8G

今夜イラついたこと https://t.co/J1K7AkRY12
noteで書いている有料の「工藤のかみつきマガジン」を更新しました。500円で読み放題。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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