NHK短歌テキスト2016年2月号を読む  ~弱る心に人など恋ふな、ほか

NHK短歌テキスト2016年2月号



吾(あ)ゆ耳の離れてぞあるそのなかにこほろぎの鳴く必死のみゆる/渡辺松男『蝶』


身を震う月に木椅子もととのいぬ声低くして物語せよ/佐伯裕子『春の旋律』




「近代歌人の面影」が岡麓だ。以前、『雪間草』という晩年の歌集をぬらっと読んだけどそれ以外ほとんど知らないので気になっていた人の一人。

十四日お昼すぎより歌をよみにわたくし内においでくだされ/正岡子規『竹乃里歌』
→ハガキに書いた歌だというが、それが歌集に収録されている。


レントゲンにわが子の耳をうつしたり廊下に出ればなほもふる雪/岡麓『小笹生』



花は根に鳥はふる巣にかへるなり春のとまりを知る人ぞなき/崇徳院『千載和歌集』

「私の好きな古典」「手さぐり古典和歌」がどちらも崇徳院を扱っていた。いいね。

古典は入門書をちびちび読んでたんだけど、離れたらあっという間にほとんど忘れたなあ。なかなか知識を身に付けるのがむずかしい。



秋の陽がそこに体を広げをりジャージの人らしやがめる土手に/澤村斉美『galley』
→「探索うたことば」から。秋の陽に体があって、ジャージの人にも体があるのがおもしろいのかも。書かれているように、体をのばす陽としゃがむ人の対比なんだろう。
ジャージの人らはなんでしゃがんでるのかが気になった。体操のひとこまが切り取られているのか。



顔映る鏡のおもて騒然と波だちながらわが夜は来る/岡部桂一郎『木星』



寒の日の鋭き鏡みがきをり弱る心に人など恋ふな/富小路禎子『白暁』

「現代うたのアンソロジー」から。
「生涯、独身を貫いた作者の気丈なひとりごと。」とある。下の句は自分に言っているんだろう。
きびしい歌の裏の弱い心のほうを見たくなる。


学校の裏手をゆけばからりんと金属バットがたまを打つおと/小池光『思川の岸辺』
→栗木京子さんの「教えて栗木さん 短歌上達のテクニック オノマトペを使う」から。
オレは新人賞の選考座談会で、栗木さんにオノマトペを短所として指摘されてから栗木さんのオノマトペについては注意している。

この「からりん」は栗木さんの言う「より独創的で、しかも自然体の擬音語」だという。納得。ボールが「高く上がったのではないでしょうか」の指摘もなるほどと思う。音でボールの飛び方まで感じさせる。
気持ちがよくて、すこしのどかな感じがする音だ。



ここから入選歌・佳作歌

佐佐木幸綱さんの一席のところにオレの名前が載ったが、だからどうという感じにまではならなかった。一席と知らずに見たら感激したかもしれない。



体験を語り終へれば手を挙げて命からがらの意味問ふ子あり/及川三治
→岩手県とあるから震災体験だろうか。命からがら逃げてきたという話をし終わったら「命からがらってなんですか」ときかれた。がっかりしそう。



活躍をお祈りしますという文字を積み重ねていく高速コピー機/高野裕和

健闘を祈ると言って荻窪で別れた友はどうしているか/萩原慎一郎

→地名がでるとおもしろくなる。その後の友の消息がわからなければ、記憶のなかの友はいつまでも荻窪にいるし、いつまでも健闘を祈ってくれている。
この「健闘を祈る」はその上の歌の「活躍をお祈りします」とくらべて、ずっと心がこもっている。好一対。



トラックがわが家の前でとまるのにお届けものはいつも隣へ/村田一広
→うちも全くそう。向かいの家にばかり届く。
関係ないけどうちの向かいの家の名字が「向田」だ。


チョココロネしっぽから食べる派の君は犬派でもあり猫派でもある/前田沙耶子
→「チョココロネしっぽからたべる派」って、ぎこちない言い回しだ。それが下の句で安定する。
人にはやり方というものがあり、それを「派」で分けるならば、同時にいくつもの派に属していることになる。
でも「犬派でもあり猫派」はちょっとずるいなあ。どっちかでしょ。



ジセダイタンカ、意外と丸つかないんだよねえ。期待が大きいのかしら。






「いのち」で一席になった

生命を恥じるとりわけ火に触れた指を即座に引っ込めるとき/工藤吉生

というオレの歌に幸綱さんの評がついていた。
評●突然、自身の内部のむき出しの本能に向き合った気がしたのでしょう。「恥じる」としか言いようのない感覚。的確な表現力に感心しました。

ありがとうございました。



以上NHK短歌テキスト二月号でした。





オレの歌を少し紹介しましたが、もっと読んでもいいという方は
https://note.mu/mk7911
noteに作品をまとめていますのでご覧ください。投げ銭方式なので無料ですべて読めます。

んじゃまた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

最新記事
リンク
月別アーカイブ
フリーエリア
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR