「プロレタリア短歌集(一九二九年メーデー記念)抄」を読む  ~哀れだ悲惨だ意志なしだ、ほか

筑摩現代文学大系68「現代歌集」。
この本は第六回になる。
今回は「プロレタリア短歌集(一九二九年メーデー記念)抄」をやる。



戦争の土産がこれだと指のない摺古木(すりこぎ)の足をつきつけてやれ/岡部文夫「浚渫船」


いよいよと云ふ日になりあおれたちはビルデングだつてゆり倒すんだ/坪野哲久「永代橋」

→やってやろうやってやろうという歌二首。
坪野作品は「なりあ」など、べらんめえな口調になっている。


資本家地主の番犬を葬れとビラ下げた竹槍につきささつてゐる犬の生首/中村孝助「小作人」
→比喩としての犬と本物の犬が掛かっているんだろう。
実景なのだろう。野蛮だ。そういう時代だったんだな。


米も野菜も金さへ出せば来るものといつまで思ふか都会の奴等よ/中村孝助「小作人」


あのとき我等の帽子はげしくまはされ会は騒然と閉ぢられぬ/前川佐美雄「街頭進出」

→「ある集会」とある。
帽子をまわすという意志表明の仕方。



二人も喰ったベルトは「注意」との赤紙に番をさして意張つてゐる/福田基生「シヤツポン虫」

工場医は全治といふがどうしてくれるこの足はまだづくづく疼むよ/(同)



工場芸術とか何とかいつてへなへなになつた女工は踊らされてゐる/福田基生「シヤツポン虫」


粥腹で押へてゐるポイントの上を特急が唸つてゆく/福田基生「シヤツポン虫」

→工場の過酷さがいろいろに描写されている。
特急の速さや音が、そこで働く者と対照をなしている。

「シヤツポン虫」はよくわからないが、「シャッポン」は方言で帽子のことらしい。



兵卒は哀れだ悲惨だ意志なしだ機械人形だまたかけだした/淺野純一「党旗のゆくところ」
→結句で動きがついている。
哀れさや悲惨さといったもろもろが含まれた走りだ。



以上。
労働者の苦しみや怒りがこめられている歌ばかりだ。
今ブラック企業にいる人がこう作るかというと、こうは作らないよなあと思った。
除染作業を詠んで角川短歌賞でちょっと話題になった山田いちろうさんのことを思い出したりした。



んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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