「めためたドロップスS」を読む  ~そぼろ弁当おいしいおいしい、ほか

めためたドロップスS

小川千世・じゃこ・ショージサキ・浪江まき子・奈良絵里子・まひろ・山田水玉・ゆいこ(敬省略)の8人の作品が収録されています。80ページ。

短歌が中心だけど、だけではなく、エッセイ、ショートストーリー、俳句、川柳もあります。

ページがみんな黄色なんですけど、なんか親しみがあるなーと思ったら、ゲームボーイの画面の色でした。

すごく女の子な本。オレは女の子はわからないけど、短歌なら少し読めるので、いつものようにやっていきます。



いなくなる予感が当たらないようにそぼろ弁当おいしいおいしい/小川千世「HOPPY」
→誰か大切な人がいなくなる予感でしょうか。悪い予感をそぼろ弁当でなんとかしようとしています。
「おいしいおいしい」と二回繰り返していますが、おいしさが二倍というよりは、おいしいことを自分に言い聞かせているみたいです。
そぼろがぼろぼろこぼれやすいこともポイントですね。


一度だけ本気で首を絞めたでしょう赤はあなたの口紅の色/小川千世「HOPPY」
→「一度だけ本」までは山崎方代の有名な南天の実の歌と同じなんですが、そこから首を絞めだすのが良かったです。偶然でしょうけど。
口紅の色ときっぱり言っていますが、本気で首を絞めるとあらわれそうな他の赤も連想します。


OLが閉まるボタンを連打するそんなレベルの連打じゃだめだ/じゃこ「コレクション:浮世」
→オレなんかは、連打したって無駄ですよと考えてしまうんですが、逆なんですね。足りないんだと。高橋名人でも言わないでしょうね。
結句に「だ」が三つあり、連打感を高めています。


わたしにはわたしの顔がよく似合う あなたにはすりガラスが似合う/じゃこ「コレクション:浮世」
→相変わらずの自信だと思う一方で、珍しく悪役がいるなとも思いました。少し前の「紙やすりみたいな人」もそうです。
すりガラスが似合うのは、見るにたえない人なのでしょう。


店員がテーブルを拭き案内をされたお客がまたテーブルを拭く/まひろ「光まみれ」
→小さな不信に注目しています。
「また」がなければ定型になるんですよね。内容に合った字余りです。


「光まみれ」について https://t.co/qLmtrFzWaS
「光まみれ」という言葉については吉川宏志さんがブログにこういったことを書いています。



水溜まりばかり歩いてここじゃないどこかに引き摺りこまれたいのです/ショージサキ「迎撃」

手を繋ぐよりかも腕を掴まれてそのままだめな方へ行きたい/ショージサキ「迎撃」

→印をつけた二首が偶然同じような歌でした。連作タイトルもそうですが、痛みというか激しさがあります。
でも、人まかせなんですね。自分の力で行こうとはしない。その気持ちはわかります。

ここじゃない何処かへ行けばここじゃない何処かがここになるだけだろう/岡野大嗣




浪江まき子さんのエッセイ(なんだかタイトルを打ちたくない)は読みごたえがあった。
オレもタバコに関しては似たようなことがあったなと思い出す。でも進学校とオレの行ってたような頭の悪い高校は対応がちがうんだなと、そもそも心のありかたが違うんだな、という感想。

オレは「あいつタバコやってるからつかまえちゃってくださいよ」みたいなキャラで(20年前の話)、教師は暗黙の了解でタバコを見逃してたな。
オレは自分から仕事をやめたことはない。

「あっちの世界」の定義がよくわからなかったな。学校より広くて自由なのが「あっちの世界」と言ったり、会社が「あっちの世界」だと言ったり。ああそうか、自分のいない集団の総称が「あっちの世界」なのか。

不良グループに合わせるのはきつい、会社の空気に合わせるのもつらい、つまり、自分をいつわって集団にとけこむのがむずかしいという、そういう話と読みました。

オレも溶け込めない人間だから似ているはずなんですが、あまり共感しなかったのは、「恥ずかしさ」の有無の違いなのかなあと。オレはあんまり人と合わせず人と付き合わないでこそこそと居続けられるんです。

自分と似てる似てないはともかく、ひとりの人の内面というのは興味深いし、貴重なものを読ませていただいたと思いました。
「居場所がない」というのはこういう感じなんでしょうね。良い場所にめぐまれますよう。




手から手へクラスのうさぎの赤ちゃんは一人三十秒まで抱ける/浪江まき子「七月、雷のなる少し前」


山田水玉さんの「彼女と小鳥」がすごく面白かったです。「勇気をもらいました」みたいなことをうっかり書きそうになる。窓のない壁を突き抜けるような不思議な爽快感です。



以上でこの本はおわりです。

「かわいい」にこだわって作られている本でして、オレにない価値観が花ひらいておりまして、ちょっとしたショックを受けました。


んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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