「NHK短歌テキスト」2015年11月号を読む  ~なぜこのなかで僕なのだろうか、ほか

NHK短歌テキスト 2015年11月号。


「近代歌人の面影」から

雪をふみいでてゆきしが白骨となりて還れり春あさき家に/小泉苳三『くさふぢ以後』



「探索うたことば」から二首。

生きものの一生(ひとよ)は球乗りの道化よと地球儀廻しをれば身にしむ/富小路禎子『幻の花』


鳥はいやしき同情者たることなけれ人なぐさめてゐるわがあはれ/三井ゆき『空に水音』

「いやしき同情者」とまで言う自分へのまなざし。



入選歌・佳作歌

馬鈴薯(ばれいしょ)の花咲く実習農場に今朝は長靴花柄選ぶ/深町一夫
→この方は河北歌壇の常連の方で、よく紙面ではご一緒する。
長靴にもおしゃれがあるんだな。


先生が突然僕を指名するなぜこのなかで僕なのだろうか/星野正汰郎
→わかる。先生は適当かもしれないが、指された生徒は驚くし、考える。
よくあることだが、歌になってるのは初めて見た。高校生の歌だが、大人になってから学生時代を思い出して作れる歌とそうでない歌があるよなあ。
学校の日常であると同時に、哲学的な深い問いにも見える。


左から二番目のカード選びたるあいつの手もとへジョーカーゆけり/池田毅
→これも、内容だけなら人に言うようなことじゃない。ただのババ抜きだ。でも何か感じさせるのは、短歌にすることによる力なのだろう。
このババ抜きに続きはなく、このコマしかないわけだ。「あいつ」は歌のなかでジョーカーを選びつづける。その瞬間の感じだけが手渡される。


悪口は禁止と決めたルールしか思い出せない交換日記/澤美菜子
→入選歌だから、テレビで放送されたのだろう。オレはそこを見てなかった。
禁止事項のせいで遠慮して書きたいことが書けなかったりしたんではないか。


その日からひとりの少女があらわれてやがて苦しむ日記となれり/渡辺健一
→自分の過去の日記を客観的に読み返してるんだと読んだ。「ひとりの少女」がその後の日々を苦しみに変えるとは、「その日」の彼は知るよしもない。


授業中にノートの端を破ってみる自分にだけ聞こえる音で/菜の花
→ノートは言うまでもなく勉強の道具であるわけで、それを破ることはワルそうな行為だ。この授業、この日常からひそかに降りようとしている。


数学が苦手な僕のノートを借りて遠藤君はどうしてるだろう/けんちゃん
→なかなか自分に「ちゃん」はつけられないよ。そういう感覚の人も気軽に投稿できるのが胸キュンだ。
ノートを貸すのはいいが、それで遠藤君は助かってないらしい。遠藤君は借りる相手を間違えたようだが、けんちゃんは友達思いだ。



えりこ日記を見て、平岡直子さんの歌がおもしろそうだと思った。







ついでながら、オレの歌が佳作に入ったのでここに置いておく。

追いかけて追い付いて手を握りしめヘッドライトに照らされたのだ/工藤吉生
(佐佐木幸綱選 「手」佳作)

絶対に反撃しないモグラだけ選ばれたのだもぐら叩きに/工藤吉生
(染野太朗選「選ぶ」佳作)



佳作はひさしぶり。どっちも「のだ」が入っている。うーむ。表現の偏りは気になる。

これで五誌掲載になっている。
現在発売中の「短歌研究」、角川「短歌」、「歌壇」、「現代短歌」、「NHK短歌テキスト」にオレの歌が載っている。



NHK短歌テキスト11月号を終わります。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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