土岐善麿『六月』を読む  ~遂に言ふべき事に到らず、ほか

筑摩書房 現代文学大系68 現代歌集
の第二回目。
この本には明治生まれの歌人、十数人の歌集が一冊ぶんずつ収録されている。一回目は岡麓『雪間草』だった。今回は土岐善麿『六月』。

この歌人については、少し前に『NAKIWARAI』という第一歌集を読んだ。
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52136157.html


今回の『六月』はあとがきによれば十七冊目の歌集とのこと。昭和15年。



遺棄死体数百といひ数千といふいのちをふたつもちしものなし/土岐善麿
が収録されていた。
知ってる歌を歌集でみかけると、「おお」ってなる。前後の歌がわかると理解がすすむ。


答ふるものも問ふものも相共に遂に言ふべき事に到らず/土岐善麿『六月』
巻頭歌。


ひと夜冷えてあかつきの風なほ烈し眼さむればみな家に眠れり/土岐善麿『六月』
→暗示的だなと思う。きびしい、はげ状況に自分だけが気づいている。


新しき記念の時計掌(て)にのせて価(あたひ)高きものは見るに愉しき/土岐善麿

河近く部屋をさだめて温泉の宿の昼の枕に頭(づ)をおきにけり/土岐善麿『六月』

→近くに河がある部屋や、温泉のことがでてくるけど、結局は枕一つにおさまる。河や温泉宿の存在が満足を与えているのかもしれない。
時計の歌もそう。たのしさはどこからきているのか。ほんとに値段の高さなのかとちょっと考えてしまう。


拙きは敢て嘆かずただ正しくひたすらなるものに徹すべきなり/土岐善麿『六月』
→ときどき格言みたいな歌がでてくるが、そのなかではオレに関係ありそうな内容で、覚えておきたくなった。


あたまより外套かぶりもの読みてこころはゆたけし年迎ふわれは/土岐善麿『六月』


この道や春の埃の風ふけばふたたび逢はぬものの遥けさ/土岐善麿『六月』


そのかみの流刑の地に来しことはわが運命にかかはりもなし/土岐善麿『六月』

→「樺太雑詠」。ここから最後まで樺太の歌がつづく。


老医師がすぐ酔泣きをする癖もいまは笑ふものなくなりぬといふ/土岐善麿『六月』


ゆふ河の岸辺におりて米洗ふさびしきことは語らざるべし/土岐善麿『六月』


夏狐ひとみものうくわれを見るにむかひてあれば去り難きかな/土岐善麿『六月』

→「ひとみものうく」が生きているというか、動物の目の描写として良い。キツネの思いを知りたくなる。



以上であります。んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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