谷知子編『ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 百人一首』 25~36

また3首ずつ12首やる。



25 名にし負はば逢う坂山のさねかずら 人に知られで来るよしもがな  三条右大臣

26 小倉山峰の紅葉葉心あらば いまひとたびのみゆき待たなむ  貞信公

27 みかの原わきて流るるいづみ川 いつ見きとてか恋しかるらむ  中納言兼輔




25
逢坂山は奈良と滋賀の境にある。「逢う」の意味とかかる。
「さねかづら」と「さ寝(共寝)」がかかる。物にからみついて生長する植物。
名にし負はば=その名の通りであるならば


26
貞信公=藤原忠平
小倉山は京都。
待たなむ=待っていてほしい

27
みかの原は京都。
「いづみ」が「いつ見」とかかる。
「わきて」は「湧きて」「分きて」とかかる。

見たことのない相手への恋の歌とされる。





28 山里は冬ぞ寂しさまさりける 人目も草もかれぬと思へば  源宗于朝臣

29 心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花  凡河内躬恒

30 有明のつれなく見えし別れより 暁ばかり憂きものはなし 壬生忠岑




28
「かれ」は「離(か)れ」と「枯れ」が掛かる。
中世は冬が注目された時代。平安時代は秋の月が美しいとされ、中世になると冬の月の美が注目される。


29
心あてに=心をこめて、よく注意して

菊の白と霜の白をかさねた。正岡子規は「嘘の趣向なり」と酷評した。
たしかに嘘であり演技だが非難にはあたらない。日本人は庭園にしろ文学にしろ、理解しやすいかたちに変容させてから取り込んできた。和歌も同じで、自然そのものではない。箱庭的な自然、優美な自然だけを和歌は素材とした。



30
定家や家隆が古今和歌集の名歌をたずねられてこの歌を推薦したという。
定家は、つれなく見えたのは月だけで、女はつれなくないと解釈していたらしい。
ここでは女もつれない態度だったと解釈されている。



31 朝ぼらけ有明の月と見るまでに 吉野の里に降れる白雪  坂上是則

32 山川に風のかけたるしがらみは 流れもあへぬ紅葉なりけり  春道列樹

33 ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ  紀友則



31
雪と月光を見間違う、見立ての歌。


32
山川=山の中を流れる川
しがらみ=柵
紅葉を柵に見立てた。


33
上の句の頭の「ハ」行、さしはさまれる「の」のリズム感。



34 誰をかも知る人にせむ高砂の 松も昔の友ならなくに  藤原興風

35 人はいさ心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香に匂ひける  紀貫之

36 夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを 雲のいずこに月宿るらむ   清原深養父



34
高砂の松は兵庫にある。
長寿を嘆くめずらしい歌


35
人の心は知らないが奈良の梅は昔と変わらずに匂っている。

いさ=さあどうだろうか。下に「知らず」を伴うことがおおい。
人は宿の女主人をさす。

紀貫之は『古今和歌集』撰者の中心的人物。土佐日記は女性を装って書かれた。男性は漢字、女性はひらがなを使うと決められていたことによる。


36
「月宿るらむ」は月を人間に見立てたもの。雲にかくれた月に対する、早く姿を見せてほしいという願望。



つづく。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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