「短歌研究」2015年8月号を読む  ~点線で書いた手紙、ほか

「短歌研究」2015年8月号。

そろそろ次の号がでるが、次のが出てからやるとまぎらわしくなるので今のうちにやる。


大根を洗ひてをればスベスベとある感触に辿りつきたり/藤岡武雄「わが戦後七十年」


滴りの次なるしたたり呼ぶごとき音のつらなる雨後のこの森/奈賀美和子「白を研ぐ」

→ポトンと水がしたたると、そのことによって次の一滴が生成されるような気がする。したたりの音がつらなって森を成している。


灯を消せば部屋そのものが風船で浮力を経験してゐるこころ/渡辺松男「卵」
→部屋が真っ暗になると何か重さか軽さを感じるということは、ある気がする。
さっきの滴りもそうだけど、感じていてもほとんど言葉にすることがないものってあるなあ。


点線で書いた手紙があったならこわいとゆーかあこがれだよね/喜多昭夫「いとしい一日」
→こわいね。なんでわざわざそんなことを。面倒なうえに読むほうも読みづらい。一字一字に念が入っていそうだ。その念にあこがれるかも。



鍵穴を夜汽車が通る 光とは影の横顔であるとこそ知れ/喜多昭夫「いとしい一日」

朝に夕に鍵をさしこむ鍵穴は従順にして開閉をなす/沖ななも「雫」

→偶然、鍵穴のでてくる歌ふたつに丸をつけていた。歌いぶりがまるで違う。
夜汽車が通る喜多さんの歌、鍵が入る沖さんの歌。箴言みたいなかっこよさのある喜多さんの歌、「従順」「開閉」と熟語を重ねる沖さんの歌。


ロボットは考え始め人間は考えるのをやめてしまえり/沖ななも「雫」


介護用手摺にわれは双頭のスフィンクスなど彫りたけれども/大滝和子「円ある世界」




特集は「戦後七十年をふりかえる」
戦争そのものを振り返る企画が他誌にはあったが、これは戦後の歌壇の出来事を振り返るものだ。


秋の夜は誰に會ふさへうとまれてショートケーキのことひとり思ひゐる/北見志保子 「女人短歌」二号


来嶋靖生さんの、昭和万萬葉集に関する文を読んで、これに興味をもった。






ともだちになってくださいひんぱんに足跡のこしますから、うさぎ/加藤治郎『噴水塔』
→ずっととんで「作品季評」から。
ともだちってそういものか? という強い違和感がある。うさぎはLINEのキャラクターのあれかもしれないし、文末の絵文字かもしれないし、ハンドルネームの類かもしれない。


スクロールスクロールスクロール「まいたけ買ってきて」スクロール/喜多昭夫『悲しみの捨て方を教える』
→スクロールするよね。出先でスマホを見ている場面と読んだ。
たとえばオレの書き込みみたいなのはどんどんスクロールしてすっとばしていいわけだが、帰りに買わなきゃいけないものはちゃんと読んで覚えておかなきゃいけない。端末のさまざまな情報のなかで「まいたけ買ってきて」が唯一にして最重要なのだ。
オレはLINEをやらないんで、そのあたりでちょっとずれているかもしれないね。いまいち自信ない。



短歌研究詠草

古カバン棄てよと言へば「友情を感じてるからいやだ」と応ふ/荒川ゆみ子
→長く使っているものに愛着がわくのはよくあるが、なかなか良いセリフだ。言ってくれるじゃないの。


ふくらはぎの形で互いを値踏みしてスタートを待つマラソン大会/ユキノ進
→へーそんなところを見るんだ、という驚きがあった。ふくらはぎの形でランナーとしての力量をはかられるとは。



付録に昭和20年9月号の短歌研究がついている。

昨日より鳴きそめしてふ鶯は今日空襲のさなかにも聞こゆ/今井邦子
→空襲の音とウグイスの声が同時に聞こえる。戦争と日常が地続きで、あるいは同時に存在しているのがわかる。


「歌壇時評」が4ページにわたって書かれているが、歌壇が機能してないのがわかる。歌壇に出来事がないもんで、えらく古いものを引用して鑑賞したり、説教みたいなことばかり言っている。

「歌壇作品合評」は、むかしの評の言葉が今とちがっていてちょっとおもしろかった。「ひと通り詠みあげられた歌」とか「表現は格調を踏んでをり」とか。
岡山さんはいつも長く書くのに、今井さんはいつも短いのが気になった。

19ページのつづきが27ページに突然あらわれるあたりも、紙数の都合があるのがわかる。
しかしむかしの手紙は読みにくいものだ。この「候」とかが。

最後のページの下のほうを見ると、日本短歌社の電話番号があるんだが、番号が5ケタだ。今は10~11ケタあるね。

最近オレは「三丁目の夕日」っていうマンガを読んでるんだけど、昭和三十年代を舞台にしたマンガで、そこに出てくる電話は番号が6ケタだった。







オレの掲載作品をいつものように最後に置いておく。

短歌研究詠草は1首。

悪いのはオレなんだけど自分へはうまく叱れずうやむやのもや/工藤吉生

これだけじゃなんのことかわからないよねえ。でも一首選とはこういうことだし、つまらんから一首選になったのだろう。



うたう★クラブは佳作に★マークがついた。4ヶ月つづけて★がついている。

垂れながら頭に触れてくる枝のある家に住むだんまりの子だ/工藤吉生

斉藤コーチはなんとなく厳しいというか、オレなんかはとっくに見透かされてるような気がするので、緊張感がある。星があると安心する。



以上です。んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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