谷知子編『ビギナーズ・クラシックス 日本の古典百人一首』 13~24

3首ずつやる。




13
筑波嶺の峰より落つるみなの川 恋ぞ積もりて淵となりぬる
陽成院

14
陸奥のしのぶもぢずりたれゆえに 乱れそめにしわれならなくに
河原左大臣

15
君がため春の野に出でて若菜摘む わが衣手に雪は降りつつ
光孝天皇



十三
「筑波嶺」は茨城の筑波山。歌垣の場としても有名。歌垣とは、春と秋に男女が集まって求愛しあう儀式。
「みなの川」は「水無川」「男女川」とも。
作者、陽成院は九歳で即位するが異常な行動が多く退位させられる。その後長く隠遁生活を送った。

十四
「陸奥のしのぶもぢずり」は東北地方の名産、乱れ模様に摺り染めた布。
「そめ」は染めと初めの掛詞。
河原院は当代きっての風流人。

十五
若菜は、せり、なずなといった若草。
陽成院のあとに即位したのが作者光孝天皇。苦労人、清貧。和歌の興隆をもたらした。




16
立ち別れいなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば今帰り来む
中納言行平

17
ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは
在原業平朝臣

18
住の江の岸に寄る波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ
藤原敏行朝臣



十六
「因幡」と「往なば」、「松」と「待つ」の掛詞。
「わくらばに」=万が一でも

十七
「神代」は、奇想天外なことが起こりえた神話の時代。
「竜田川」は奈良の川。
「くくる」は「くぐる」とも解釈される。定家と業平では別々の意味で考えていたとも言われる。
くくるは絞り染め。川を一枚の布に見立てて、紅葉に絞り染めにされたという意味になる。

「伊勢物語」は美男業平の恋物語を中核としている。

十八
住の江(すみのえ)は大阪。
「夜」と「寄る」。
「夢の通い路」は夢の中で恋人に逢いに行く路。
藤原敏行は能書家として有名。法華経を書写したが、魚を食べ、女と関係を持ちながら書写した罪で地獄に堕ちたという。




19
難波潟短き蘆のふしの間も 逢はでこの世を過ぐしてよとや
伊勢

20
わびぬれば今はたおなじ難波なる みをつくしても逢はむとぞ思ふ
元良親王

21
今来むといひしばかりに長月の 有明の月を待ち出でつるかな
素性法師



十九
女の恨みの歌。
蘆の節と節の空間的なみじかさが時間の短さへと転じる。難波潟の荒涼とした風景が心情を映像化。

二十
「みをつくし」は澪標(船に水脈を知らせる標識)と身を尽くし(破滅する)の掛詞。
政権への反逆行為になるような恋。
作者・元良親王は当代きってのプレイボーイ。

二一
有明の月は、夜明け後も空に残るため恋歌によく使われる。



22
吹くからに秋の草木のしをるれば むべ山風をあらしといふらむ
文屋康秀

23
月見ればちぢにものこそ悲しけれ わが身ひとつの秋にはあらねど
大江千里

24
このたびは幣も取りあへず手向山 紅葉の錦神のまにまに
菅家



22
中国の「離合詩」の影響。
山と風を合体させらしかも草木を荒らすので「嵐」というのだと漢字の成り立ちに納得してみせた一首。

23
千々=さまざまに、かぎりなく。
「千々」が「ひとつ」と対になる。
「わが身ひとつの秋にあらねど」は「私一人のために訪れたような気がする」という意味を言外に省略する。

夕霧も心の底にむせびつつわが身ひとつの秋ぞふけゆく/式子(しょくし)内親王


24
菅家=菅原道真。
手向山は奈良山の一部。地名と「手向ける」をかけた。
「旅」と「度」の掛詞。
「幣」は紙などを小さく切り道中の無事を祈り神に捧げたもの。紅葉を幣に見立てた。
紅葉を神に捧げるのは自然を支配する王者の発想。狩猟の旅。狩猟は支配の象徴。王権とかかわる歌。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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