土岐哀果『NAKIWARAI』を読む  ~ Utura no Mimi ni, Haru no Kane naru 、ほか

土岐哀果『NAKIWARAI』を読む。



「特選 名著復刻全集 近代文学館」とある。復刻版らしい。
32ページで、1ページ5首。
内容よりも、三行書きですべてローマ字表記であることが気になる。
読みづらさがすごかった。長くてたまらない。それがだんだん慣れてくると好ましく感じられてきた。

啄木がこの歌集について書いている。
「誰でも一寸一寸経験するやうな感じを誰でも歌ひ得るやうな平易な歌ひ方で歌ってあるだけである。其処に此の作者の勇気と真実とがあると私は思ふ」


啄木と哀果の関係については
http://t.co/4suf6jtbkt
に詳しい。


善麿という名前の方が慣れているんだが、この時は哀果なので、今回はそれでいく。
明治40年から42年までの歌が収められている。

「明治40年このかた三年余りのから選んで、そのできた順に並べたのがこの一冊である。」 http://t.co/ER5G5FowYh

表紙から序文からなにからなにまでローマ字で表記してある。




Aki no hikari Kusa ni shimiiru,―
 Mono iwazu,
Yorisoite arishi Omomi no sabishisa!
/土岐哀果『NAKIWARAI』


やたら「!」を使いたがるのも一時期の啄木っぽい。「──」も多い。
読むのに努力が要る。しかも印刷されたアルファベットが妙にくねくねしているときたもんだ。

秋の光草に染み入る 物言わず 寄り添いてありし重みの寂しさ!



Koko ni miyo,─
 Kono Taku no ue,
Hitobito no michitarite sarishi Ato no Utuwa wo!
/土岐哀果『NAKIWARAI』

→人々の飲み食いしたあとの器を見ている。「ここに見よ」という強い入りかたをしている。



Otome ari,ware wo shitainu,
 Ware mo koinu,
Wakaki hi nareba kakute taraiki.
/土岐哀果『NAKIWARAI』



Tama wo tsuku, hiru mo yo mo, tada,
Ware to waga Haru no Urei wo,─
 Mashiro no Tama wo!
/土岐哀果『NAKIWARAI』

→真白の球を突くとはビリヤードのことだろう。明治からあったのか。
憂いから逃れようと苦しんでいる様子が伝わってくる。
オレは一時期、けん玉にそのようにのめりこんでいたことを思い出した。



Futo samete, mata madoromishi Akegata no,
 Utura no Mimi ni,
Haru no Kane naru.
/土岐哀果『NAKIWARAI』



Ringo muku Naifu no temoto,
Yubisaki no takumisa mitsutsu,
 Mono mo omowazu.
/土岐哀果『NAKIWARAI』

→ナイフをNaifuと書かれると変な感じだなあ。
ものを思わずにリンゴの皮をむく手つきを見ている。催眠術のようなところもある動きかもしれないね。


明治40年は恋愛の歌、青春を感じさせる歌が多く、41年は自然の歌が多い。これからご紹介する42年は女性の歌が多い。


Waga gotoki mono ni kashizuki,
Yasunjite aru Orokasa no,─
 Itoshiki Onna!
/土岐哀果『NAKIWARAI』



Akaki Bara,
 Tsumiyarishi nomi wo,
Issho no Ichidaiji tomo omoite aru rashi!
/土岐哀果『NAKIWARAI』

→どうやら、女性のほうは自分に夢中だが男性のこちらはそれほどでもないといった様子だ。



Yokotawari,
Tatami no ue no Chiri hitotsu mitsutsu aredomo,
 Nanigoto mo nashi!
/土岐哀果『NAKIWARAI』

→まあそりゃあNanigotoもないだろうなあ。なんとも暇そうな歌。なんの感嘆か、「!」がついている。思えば、そういう時間を過ごすこともなくなってきたなあ。親しみを感じる。



Garagara to iu Omocha ari,
 Sore wo omou,─
Harami-onna no Hara no okashisa!
/土岐哀果『NAKIWARAI』

→オレがこんなことツイートしたらフォロワーが減りそうだ。
ガラガラはそんなに昔からあったのか。今のとは音が違うんだろうなあ。



Ware wa tada nare ga omowan koto nomi wo,
 Katari itsuru wo,
Aware, Onna yo!
/土岐哀果『NAKIWARAI』



Atarashiki Shatsu ni kikaeshi Hadazawari,
 Onna to iu mo,
 Sorehodo no koto.
/土岐哀果『NAKIWARAI』

→という歌で『NAKIWARAI』は終わっている。
終盤は女性を軽視するような歌が目だった。これの少し前にも、約束を守らない女のことや、パン屋の娘がおまけしてくれないという歌がある。
抄出となればそういう歌は外されるだろう。

なにか女性関係でうまくいかないことでもあったのか、チクチクと歌で攻撃している。始めのほうには素直な恋の歌もあったのに……。
「kimi 君」から「onna 女」に言い方が変わっているところからも立ち位置の変化が見てとれる。


あらためて最初の方を見てみる。

Kimi omou kokoro ni niru ka,─
 Haru no hi no
Tasogaregata no honokeki akarusa!
/土岐哀果『NAKIWARAI』


歌集の巻頭二首目。

春はいいな。さっきの鐘の歌もいい感じの春だった。



以上です。んじゃまた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

最新記事
リンク
月別アーカイブ
フリーエリア
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR