「短歌研究」2015年7月号を読む  ~瑣末なる歌にその世が映る、ほか

短歌研究2015年7月号。


つまらない春であつたよこせこせとあらもうこんな時間といひて/青木昭子「始末つかざる」


緑まみれの山はじわじわ我が窓へあゆみ寄りくる気配おそろし/青木昭子「始末つかざる」


さみしさはまだ春のもの しろい鳩はいいろの鳩すこしはなれて/佐藤弓生「顔も知らない」

→はなれていることがさみしいのかな。色が違うから離れているんだろうか。


はげますもにぶくなりたるわが脳(なづき)女人と話すときにはたらく/外塚喬「茱萸の花」
→女の人と話すときには張り切っていいことを言おうとして脳が活発になるということか。


野球部の息子の試合見にゆくといふことあらずわれの人生/大松達知「タツハル!」
→娘さんはいるが息子さんはいないので自然とそうなる。
上の句は平凡な出来事を言っているが、下の句で消えてなくなる。それを一生経験しない人だって少なからずいることを感じさせる。一見平凡だからといって誰でも経験するわけじゃない。


特集は、短歌の時評について。オレは時評云々よりも、結社の人々がこんなに集まって一つのことを語っていることをおもしろいと思った。よその結社誌の話っておもしろいな。書き手がいなくて困っている雑誌も見受けられた。

だから時評以外でも、例えば、結社誌に詠草はどう並べるかとか、評はどの程度どのようにつけているかとか、表紙はどうしているかとか、選歌体制であるとか、あらゆることについていろんな結社の考え方を聞いてみたいと思った。



わが母は死に給ひたり? まちなかにがくぜんとして足をとゞむる/中井英夫「母と子のうた」
→「?」の使い方に特徴がある。信じられないという思いか。ひらがなが多い。


我が命守らんがため殺意持ち蜂一撃し死骸を処しぬ/工藤昭生「晩秋」
→「作品十首+エッセイ」は質が劣るように感じるためあまり熱心に読まないページなんだが、オレに似た名前を見つけて注目した。
「殺意持ち」がポイントか。日常のなかの殺意。

手をあげて蚊の全身を叩きたり生きよとも死ねよとも思はず/七戸雅人「火と冷夏」
「歌壇」2015年2月号のこんな歌も思い出す。

並べてみるといろいろ違う。蚊と蜂では違う。蜂はあぶない。
殺意の有無もくっきり分かれる。
工藤作品の「一撃し」「処しぬ」は動きが見えなくしてあり、七戸作品は手の動きが見える。



作品季評は大島史洋さんの歌がよかった。気になる歌人のひとりだ。なかなかまとまった量で読む機会はないんだけども。

瑣末なる歌にその世が映るとぞかく言いて何を言い得しならむ/大島史洋『ふくろう』
→坂井さんは笑っているけど、オレは痛いところを突かれる思いがした。それ言うと評した気分になるもんだから、言ってそれでよしってことにしちゃいがちなんだよね。


豊かなる心をもてとオーボエの曲は流れぬ深夜の部屋に/大島史洋『ふくろう』
→そのままの普通の歌だとか、短歌初心者が作ったみたいとか言われているが、そうかなあ。見事だと思うよ。
音楽を聴いて、豊かな心を持ちなさいと言われているように感じることはなかなかないが、しかしたまにはある。よくつかまえたと思う。「オーボエ」と、楽器名だけが明確にされている点もいい。
深夜の部屋っていうのは心が狭くなりがちだ。考えが偏ったり大袈裟になったりする。それをじゃあクラシックで広くできるかというとそうでもないんだけど。

わが娘深夜の厨に納豆を立ちて食いいきたのもしきかな/大島史洋『ふくろう』



いやがりてデイサービスに行かぬ母も喜び行きし父もあはれなり/豊田純子『冬花園』



ロウソクをふきけさないでロウソクをふきけす顔は知りたくないの/北川浩久『滝枕君細末』

背伸びするくらいなら長い足になれ海の底までつく足になれ/北川浩久『滝枕君細末』

歌集評のページから。全然知らない人だがおもしろそうだなあ。何歳くらいでどこの所属で何冊目の歌集なのかとかが書いてあると親切なんだがなあ。作者によっては職業が反映していたりもする。ネットで検索したらもう一冊歌集があるようだ。
ふきけす顔や背伸びをいやがったりしている。



短歌研究詠草

「徐行」といふ旗持つひとはその旗をときたま閉ぢてみたりもしをり/三田村広隆
→自分が見ていないところでは世界に何が起きているかわかったものではないな、なんて思うことがオレにはある。車がいないところでは徐行のルールは「ときたま」揺らいでいる。


うたう★クラブから一首。

輪郭のぼやけた鳥が飛んできて時々きみの声でさえずる/宥生







オレの歌。

オレは短歌研究詠草は二首。

目に見えぬ喪失つづくような日の夕方起きて虫の声きく/工藤吉生
前日の疲労は寝ても抜けきらず今日の疲労としてひっかつぐ/工藤吉生

オレの短歌研究詠草のいままでの成績はこちらに最近まとめた。
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52133603.html



うたう★クラブは佳作。星あり。

菓子パンと野菜ジュースが入ってるコンビニ袋の重さの猫だ/工藤吉生



以上です。んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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