川田一路『NEXT ONE』を読む  ~殺人は京都に限る、ほか

川田一路さんの歌集『NEXT ONE』を読みました。

塔21世紀叢書というシリーズのひとつ。2013年。定価が税抜き2571円。
1ページ2首で、500首弱といったところか。

固有名詞がかなりわからなくて、世代の差であったり地域の差を感じることが多かったです。



しらじらと日記に嘘を記したり もののかたちに雪は降りつむ/川田一路『NEXT ONE』
→「しらじらと」が嘘にかかり、雪にもかかる。嘘で覆い隠しても、もののかたちはあらわれてくる。


ふと箸を置きたるときによぎりくる飛蚊症のごと死への思いが/川田一路『NEXT ONE』


夕暮れて映画はモノクロ音楽はモノラルがいい風とおりゆく/川田一路『NEXT ONE』

→共感はしないけど、こんな人もいるんだなと新鮮に感じた。オレとのちがいをくっきりと見せられたような一首だった。


炎(ひ)のなかに顕れ消ゆる思いあり両の手のひらかざしておりぬ/川田一路『NEXT ONE』
→思い出にあたためられぬくもるような感じか。
燃える火にむかって手をかざすような温まり方も、もう長いことしていないなあ。


家中を探しておれど日の丸の旗は出てこず きょう文化の日/川田一路『NEXT ONE』


津津浦浦五五〇万の自販機が木枯らしのなか立っております/川田一路『NEXT ONE』

→「津」と「浦」と「五」が二つずつ並んでいる。いくつかで並んで立っている自販機も多いことを思う。自販機にもお疲れ様を言いたくなる。
屋内の自販機もあるだろうけど。


全身にステンドグラスの色浴びて磔刑の像眩暈のなか/川田一路『NEXT ONE』


もう少しゆっくりしていったらと叔父の声ふいに甦る遮断機の前/川田一路『NEXT ONE』

→もちろん遮断機の前でゆっくりしていけという意味ではない。電車のように走り去る日々なのかもしれない。
こういうことはありそうに思う。


コンピューターに女流王将敗れたり勝者に贈らん造花のブーケ/川田一路『NEXT ONE』


目薬をさして流れし涙さえかなしみ少し持ち去りてゆく/川田一路『NEXT ONE』


殺人は京都に限る今宵また華々しかりテレビミステリー/川田一路『NEXT ONE』

→「殺人は京都に限る」は面白い断定だ。
定番のテレビ番組だけど、このジャンルを考えたひとはすごいと思う。殺人て暗い場所でこっそりやるもんだろうに、それを華々しく魅せてしまうなんて。


切れば切るほどにますます長くなるロープマジック痴話喧嘩に似て/川田一路『NEXT ONE』


降る雪に街暮れなずみ時計屋にときたがえたる時計がならぶ/川田一路『NEXT ONE』

→いいなあー
いろんな時間をさしている時計。これは針でうごく時計であってほしい。降る雪と合わさって、人生のさまざまな時が思い浮かぶようだ。


打ち水の水の欠片に驚きてもの運ぶ蟻列を乱せり/川田一路『NEXT ONE』


風呂敷で作りしズボンの子もおりて入学写真は終戦の年/川田一路『NEXT ONE』




1ページ2首なんだけど、いくつか1首をページの真ん中に置いているところがある。いい歌なのでそうしているんだろうけど、「どうだ!」という感じがしすぎるし、統一感が崩れるのが気になった。

いろんな古いものがでてきて、知らないようなものでもなんだか懐かしく感じられた。そこがよかった。
あとがきにあるフルヴェンのブル九が、意味ありげに感じられる。


以上です。んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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