上野誠『はじめて楽しむ万葉集』 第一章、第二章

上野誠『はじめて楽しむ万葉集』

角川ソフィア文庫、税別705円。本文210ページほど。

気軽に読める感じの入門書。「序」には、飛鳥→藤原→奈良と都が移ったということが書いてある。


各章が7~9の部分からなる。



第一章


巻一の一、雄略天皇の歌からはじまる。

雄略天皇の即位が456年。万葉から見ても古いことだ。「この天皇の時代に、日本の国土は統一された」と考えられていたという。この歌を最初においたのは、万葉集を立派な書物であると権威づけるためだとある。
天皇の求婚は、大和に春を告げる年中行事だとある。「作物がたくさん採れますように」と祈る農耕儀礼であると。



釆女(うねめ)=全国から集められた地方豪族出身の女性たちのこと。天皇のそばに仕え、さまざまな仕事をしていた。




春過ぎて 夏来るらし 白たへの 衣干したり 天の香具山/持統天皇

「らし」は非常に強い言い方。推量ではなく根拠のある推定を示す助動詞。
この衣はなんらかの祭りで使われた衣と考えられる。それを神聖な天の香具山に干されるのも年中行事。



舒明天皇の歌。

うまし=立派だ、素晴らしい

煙が立つ→炊事をする→飢えがない
鳥が飛び立つ→たくさんの魚がいる
→豊かな国

香具山は天から降ってきたという説がある。だから「天の」香具山であり、精霊が集まる神聖な場所であるとされる。




飛ぶ鳥の 明日香の里を 置きて去(い)なば 君があたりは 見えずかもあらむ/元明天皇

「飛ぶ鳥の」は「明日香」にかかる枕詞。「飛鳥」であすかと読めるのはこれがあまりにもゆうめいになったから。




あをによし 奈良の大路は 行き良けど この山道は 行き悪しかりけり/中臣宅守

平城京には立派な広い道がある。朱雀大路は道幅七十メートル。柳の並木がある。平城京にすんでいた人の誇りだったとある。




春の日に 萌(は)れる柳を 取り持ちて 見れば都の 大路し思ほゆ/大伴家持

萌れる=芽吹いた




第二章



西の市に ただひとり出でて 目並べず 買ひてし絹の 商(あき)じこりかも/作者未詳

目並べず=見比べもせず
商じこり=買いそこない

絹の買い物を失敗したという表の意味、恋人えらびで失敗したという裏の意味。




憶良らは 今は罷らむ 子泣くらむ それその母も 我を待つらむぞ/山上憶良

途中退席の歌。子や妻が泣くから帰ると。憶良が六十歳を越えていることから笑わせ歌とされる。




験(しるし)なき 物を思はずは 一杯(ひとつき)の 濁れる酒を 飲むべくあるらし/大伴旅人

悩んでもしょうがないことを思うより……、一杯の濁った酒を飲むほうがまし!




我が背子が 着る衣薄し 佐保風は いたくな吹きそ 家に至るまで/大伴坂上郎女

大伴坂上郎女は旅人の異母妹。旅人の子である家持から見れば叔母。

甥を恋人を送り出すようにして見送る。




尾花=すすき




奴=使用人




夕されば 小倉の山に 伏す鹿し 今夜(こよひ)は泣かず 寝ねにけらしも/雄略天皇

夕されば=夕方になる

夕方になると小倉の山に来て伏す鹿が、今宵は鳴いていない……寝てしまったのかなあ──。

鹿は妻を求めて鳴くとされた。とすれば、「妻が見つかって、妻と共寝をしているんだろう、よかったね、結婚相手が見つかって」という歌になる。




皆人を 寝よとの鐘は 打つなれど 君をし思へば 寝ねかてぬかも/笠女郎(かさのいらつめ)

大伴家持との恋。
奈良時代の都に陰陽寮という役所があり、時刻によって鐘を打った。「寝よとの鐘」は午後七時から八時ごろとされる。




つづく。十章まであるので、五つの記事になる予定。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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