角川「短歌」2015年6月号を読む  ~なにもかなしくなくなって、ほか

角川「短歌」2015年6月号。



現認しましたひだりによせてとめなさいさうさうさうしたらいい/平井弘「ハナミヅキ」
→交通違反で聞くような言葉だ。「さうさうさうしたらいい」に権力のいやーな部分がでている。


一両列車とほりすぎたりゆれながら何かを探すカーソルのやうに/川野里子「おやすみ」
→一両列車ってことは田舎のほうかな。カーソルが風景のなかを動いていったら不思議な光景だ。


ひとひらの私の影を白昼のゼブラゾーンにすべらせている/加藤治郎「光る砂」
→影が黒をイメージさせて、そのあと「白昼」がありコントラストができる。それから「ゼブラゾーン」が出てきてかなり白黒白黒している歌だ。
ひらひらしていたりすべっていたり、まるで実体がないようで不気味だ。


パンケーキに十字を刻むナイフから伝わるなにか斬るやわらかさ/加藤治郎「光る砂」

さすがだなと思って読んだ。こちらがわの日常と報道の向こう側との境界線が溶けて流れるような印象をもった。

いつかきっとなにもかなしくなくなって朝の食パン折り曲げている/加藤治郎「光る砂」
→「いつかきっと」ってことはそれは未来のことなんだろうけど、下の句では現在のことに話が変わっている。時間がねじれているみたい。この「いつか」は現在と地続きであると感じる。


産道のぬめりをぬめぬめぬめりつつ降りてゆく頬 闇を脱ぐため/大森静佳「五月──まだ産まれおわらないあなたに」
→「ぬ」と「め」は似ている。並んでいると少しずつ動いているように見えなくもない。パラパラ漫画がそうであるように。
下の句も新鮮味がある。こうしてみると、他の歌もどこをとっても創意がみなぎっているように見える。



特集 題詠「昭和九〇年」から。

昭和昭和昭和で数ふれば九十年中の二十年は血みどろにして/清水房雄「戦争の記憶」


先端機器を買ふ人ならぶ完成の途中を買はされてゐる人ら/高野公彦「幽霊船」


戦死せし子に陰膳を今もなほ供へゐるべしあの世の祖母は/栗木京子「兵役免除」

→Twitterでツイートしたら反応の多かった歌。あの世で再会できないのが悲しい。習慣があまりに強く体に染み込んでしまったか。


ニューハーフは兵役免除といふ規定あるやも昭和一〇〇年の日本/栗木京子「兵役免除」
→ニューハーフが女性として認められる一方で、戦争は避けられない2025年。
免除のために体をそういうふうにする男性が出てきそうな気がする。



「うたの道」案内
オレは大井学さんのところに該当する。つまり、三十代で歌歴1~5年。
人間関係をつくれ、古典を読めというすすめ。どちらも苦手だ。なるべく出ていけるところには出ていかないとなあ。

古典については、あんまり取り組みができていない。篠弘さんの短歌史の本をちびちび読んだり万葉集の本を毎日少しずつ読んでるくらいだ。

足りない部分を指摘してもらえたのでよかったんだが、それをやるのは簡単ではない。古典といっても広い。
ビジネスの話がでてクラクラした。「関係性構築のノウハウ」「ダイヤモンド型営業」。オレの年齢ではそういうテクが身に付いてるのか……。恥ずかしい大人です。

このままいくと「歌歴十年の四十代の方」になる。そちらでは藤島秀憲さんが書いている。歌集を作って読んでもらおう、結社の役目を果たすと人間関係が濃くなる、惚れ込んだ歌集をとことん読み込もうという内容。

さらに「歌歴二十年の五十代の方へ」。柳宣宏さんが書いている。これが自分の歌だ、という歌が作れた時に歌集を出そうと思えたこと。
いま調べたら、柳さんは50歳で第一歌集を出している。卒論で西行をテーマに選び、働きはじめてまもなく「まひる野」に入会したというから、歌集までの年月は短くない。
歌歴十年で歌集を出した藤島さんとは違う。それぞれの道がある。



タクシー内は禁煙です。みたいな顔で桜が咲いてわたしはあなたの偏差値を知る/溺愛
→「てのひらの街」から。若い人がよく出てくるコーナー。
閉・開・閉でできている。タクシー内のルールという閉じたものがあって、桜や「あなた」で開きかけたところに、偏差値。
これはエッセイもそう。不安、安心、悲しみ。
明るい楽しいことより退屈なこととか悲しいことの方がずっと実感があるものだなあ。
この桜は相当退屈な桜のようだ。


公募短歌館からひとつやっておわります。

軍人って人殺しねえと幼言う返事にこまる写真をおろす/富永文代








オレは公募短歌館の佳作ひとつのみ。

あらかじめ中年壮年老年の顔の予測のつく小学生/工藤吉生
(森山晴美 選)



おわります。んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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