篠弘『現代短歌史Ⅲ 六〇年代の選択』 第七章・「前衛短歌」から現代短歌へ

篠弘『現代短歌史Ⅲ』第七章・「前衛短歌」から現代短歌へ
〈「現代短歌」の規定〉

篠は短歌史上の近代の上限を明治四十年代におき、その下限を茂吉・迢空の死んだ昭和二八年あたりにおこうという仮説を出した。戦後短歌をもって現代のはじまりとする通説に反対した。 近代短歌は自然主義を基軸としている。現代短歌の起点として、塚本・岡井・寺山らによる、自然主義リアリズムを超えようとする方法の改革に注目した。

菱川善夫は現代の起点を昭和一五年前後におこうとする。筏井、坪野、佐美雄、斎藤史、佐太郎らの『新風十人』に起点をもとめた。








篠弘『現代短歌史Ⅲ』第七章・「前衛短歌」から現代短歌へ
〈『朝狩』の現実認識〉

岡井隆『朝狩』の評価について。
大岡信が、モチーフに自己主張の表立たないような「リリシズムと完成を愛する」としたこと。
前登志夫は「土地よ、痛みを負え」三〇首について「この歌集の最も弱い部分、素直な章、いわばピアニッシモのところを叩いて、単調な詠嘆のなかに、岡井隆という作家の全存在を直接するおもいで感じる」とした。

葛原妙子は「群論」について「作者はこの一連の中で〈群〉なるものの生態を追及することによって〈群〉自身ち批判を与え、併せて自らの立場を語ろうとするもの」として評価した。
「群論」は、自註によると「個と群という図式を、さまざまな喩と体験とを溶接することによって、定型短詩のうちに生動させることができはしないか」を企図したとされる。


開かれてやがてはげしく閉じらるるさびしき窓ぞ 他者の手のため/岡井隆


「婚」について篠は「新たなる性愛に苦しみながら没入していく姿がうたわれているとともに、それが喩になって、安保体験後のわが国のあがきそのものがうたわれているのではないか」とした。

岡井は昭和三七年より個人誌「木曜便り」をはじめ翌年に「木曜通信」をはじめた。週刊の葉書通信。定型を定型たらしめているものを模索した。

この時期を「定型における韻律を活かすことによって、どこまで「抽象的思考」を感性化しうるか、しかも、それがまた、現代人の現実認識になり得るかという課題であった」と篠さん。







篠弘『現代短歌史Ⅲ』第七章・「前衛短歌」から現代短歌へ
〈前登志夫の修羅〉
前登志夫は前衛短歌から離脱してゆく。塚本邦雄『水銀伝説』について独自の評価を見せる。「著者の自負する美の極致も、壮大な観念の形象化も納得できない。なるほど観念発生の構図は比類なく豊富に展開される。だが、観念それじたいがない。では何を読むか。卓抜な諷刺の魅力だ。エスプリ(機智)のものを貫く見事さだ。ユーモアだ」


前登志夫の「時間」三〇首(「短歌」昭和36.6)は傑作。高安国世や藤田武が評価する。
藤田「「自然の中に再び人間を樹てる」というテーマをもつ前登志夫にとって、一つの飛躍がなされたといえる佳作だ。」


翌年の「交霊」三〇首は呪術的なアニミズムの世界をもつ。同世代者から評価された。
また「転形期における伝統意識」というエッセイがある。短歌前衛に旅行詠を提案し、また、みずからの作歌の基点をたしかめようとした内容。








篠弘『現代短歌史Ⅲ』第七章・「前衛短歌」から現代短歌へ
〈武川忠一と馬場あき子の変貌〉
武川忠一は素朴な自然主義的方法からの脱出を模索した。古代に執着し、古代の呪歌、神がのりうつって神意をつたえる巫女の世界をうたった。


あるときは襤褸の心縫わんとしき襤褸の心さらされていよ/武川忠一


自らに問えと決めしがある部分より炎のごとく昂ぶりしのみ/武川忠一


第二歌集『窓冷』は古代習俗の悲傷性にはじまり、現在の内面を錫出するという、そうすることによって矛盾に富んだ自己を衝こうとしたもの。



寝泳ぎに夕陽の長さ測りおりひとりの夏はもろ手にあまる/馬場あき子

能舞台を場とした「舞歌」が注目をあつめた。それと安保との関連。

騎手落ちし馬ははるかに疾走しかの激動の夏のうずしお/馬場あき子



つづく。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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