篠弘『現代短歌史Ⅲ 六〇年代の選択』 第六章・東京歌人集会の周辺【前編】

篠弘『現代短歌史Ⅲ』第六章・東京歌人集会の周辺
〈東京歌人集会の運動〉

昭和三一年六月に発足した青年歌人会議は三四年三月に解散。全国規模の超結社集団で四四人からの新人が属していた。
その二年後に東京歌人集会が結成された。岸上大作の死と関わりがある。岡井隆、篠弘、藤田武、武川忠一、吉田漱が中心となる。二〇人に案内状が送られた。

「東京を中心として組織する」
「隔月に定例研究会をもつ
」。

例会は「いわゆる前衛短歌の問題点」「国語問題と短歌」「前衛俳句の問題」……とさまざまな問題について話し合われた。シンポジウムもひらかれた。

昭和37年、関西にもグループがうまれる。関西青年歌人会「黒の会」。塚本邦雄、前登志夫、吉田弥寿夫、山中智恵子など。東京とちがうのは、多くの同人誌に支えられてシンポジウムが運営されたこと。

東京歌人集会は昭和三八年四月に「一九六三年・現代短歌シンポジウム」を主催する。全国から一一二名からのメンバーが参加。テーマを掘り下げるのはむずかしかった。

三者の「評論による問題提起」。塚本邦雄「現代短歌における方法の研究、その美学と倫理について」、森正博「伝統を無視せよ」、島田修二「『場』について」にはすくなからぬ反応があった。

「作品による問題提起」では佐佐木幸綱「『あなたの子供が欲しい』なんていったくせに。馬鹿野郎」十首が注目された。



昭和三八年から三九年、東京歌人集会は二期の活動をおこなった。シンポジウムに積極的に参加し、例会をひらいた。

不意に首が切り落とさるる感じにて昼の花らのなかに眩暈す/新井伸一

東京の二回目のシンポジウムについて書いてある。政治詠の方法、あらたなる定型意識、共同制作の可能性、始源回帰としてのセックス、同人誌運動の果たす役割などについて論議された。


角川書店「短歌」が昭和三九年五月号をもって編集責任者の冨士田元彦を更迭した。前衛歌人の起用、シンポジウムのレポートが東京歌人集会寄りの編集となったこと、共同制作の掲載などに、旧世代からの反発があったという篠さんの見解。
冨士田から片山貞美の手に移った「短歌」は「昭和十年代の短歌」を三回にわたり特集するなど、歌人層のひろがりを意識していった。
総合誌に期待できなくなった東京歌人集会の歌人たちは発表の場として『現代短歌'66』を刊行することになる。その後の慰労会を東京歌人集会の正式な解散と篠さんは見る。








篠弘『現代短歌史Ⅲ』第六章・東京歌人集会の周辺
〈「共同制作」の明滅〉

島田修二はシンポジウムで「『場』について」という提言をおこなった。「集団の詩」について論じられている。集団の詩、共同制作的な「連歌」の復活がもとめられた。

「律」三号に塚本邦雄の構成・演出による共同制作「ハムレット」が発表された。ハムレット役の佐佐木幸綱をはじめ、キャストとして歌人十名が参加した。短歌がちりばめられ、連歌になっている場面もある。
賛否両論がうずまいた。


谷川俊太郎、寺山修司、佐佐木幸綱による「祭」は「はじめは単なる音にすぎないものが、しだいに言葉を探りあててゆき、やがて形を得て、定型詩のリズムにはまりこんでゆくような、定型詩までの〈ことば〉同士の葛藤をすべて記録したみよう」という寺山の意図で制作された。
「村的な、いってみれば集団の虚ろな結合を鎖を絶ちきった祭のイメージそのものが、創造的な空間として、鮮明に形象化された」という城本雁の評価。城本雁は冨士田元彦の筆名。

塚本の「ハムレット」に対抗したのが、山田あきの構成・演出による定型詩劇「蟹工船」。社会派のメンバーが名を連ねた。これには歌壇内外からきびしい批評がなされた。
藤田武「個々の作品は自然主義リアリズムの克服の姿勢を示しながらも、散文的、説明的表現でドラマの内容を伝達しようと焦り、逆に思想の画一性を招いている」

共同制作への批判。
久保田正文は塚本の「ハムレット」を「日本印刷文化見本市のサービス用試作品にすぎぬ」とした。山田の「蟹工船」には「いよいよペーパー・シアター御用共同制作時代来るとあわてふためいた伝統派女流歌人や、民主主義派歌人が、白髪染め、紅かね塗って走り出したのだから、なんとも滑稽を通り越して悲惨のきわみというほかなかった」という。

木俣修は、共同制作の試みは短歌本来の動きとは別個のものであり、それによって短歌にプラスされるものはないという見方をしめした。

「共同制作が生まれてくる背景には、作品における「私」の拡大という希求があった。事実としての「私」の個人主義的発想からの脱出があった。」
「みずからの歌うべき主題の喪失を予知していたからでもあった」
と篠さん。

共同制作に場を与えた角川「短歌」の変質により、共同制作は衰微していった。



つづく。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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