「なんたる星」2015年4月号を読む  ~愛をつたえるからだの動き、ほか

「なんたる星」2015年4月号。
安福望さんとのコラボ号となっていて、「いしゃどうナイト」が後半にあります。
http://t.co/nrfL7Paz43



恋をしているさんの「ある投書」は枠組みがおもしろかったです。投書の紹介が短歌になっている。最後もうまく決まっています。わかるまで少し時間かかりました。考えオチというところでしょうか。



はちみつで育った毛から花々のにおい たたかえないよ、たましい/加子「出荷前夜」
→なにかの動物が出荷されていく前夜ということなのでしょう。
はちみつ・花々からの、たたかい・たましい。のどかな世界から戦場にひきずりこまれたような悲しさがあります。



海水をポカリスエットで薄めてる(ハローベイベー)女子高生め/ナイス害「新潟で火照る」
→海水のしょっぱさにポカリスエットで対抗しようとしている。それをそんなに否定的に見ているわけではないんじゃないでしょうか。「ハローベイベー」のニュアンスはよくわかりませんが、軽いノリでやってるんだと読みました。

「のんきくん」という漫画で、のんきくん一家が海に行く話がある。
のんきくんのママがリュックに砂糖をいっぱいに詰め込んできていて、その理由をきかれて「海はしょっぱいから」って言ってて、それをずっと覚えている。

女子高生がノリだけで無茶なことを考えて実行することがあるけど、やるかやらないかで、ギリギリでやらない行為って感じだなあ。
(後で、実際に見たものだと作者ご本人から聞きました。それを聞いて読みが変わるのはどうかとも思うんですが、ちょっとだけ変わりました)



吹き替えをミュートで見れば学べます愛をつたえるからだの動き/はだし「おもい」
→これは人気の出そうな歌だなと思いました。
吹き替えで無音だと内容がわからないから、愛をつたえるからだの動きだと思って見ているものが、もしかすると、浮気の言い訳を信用させようとするジェスチャーだったりするかもしれません。

音声を消して見てゐる討論の政治家の口の形卑しも/田附昭二

という歌を思い出しつつ。



あのいしゃどうひとしってやつ なんなんだい ホッチキスで殺しにきたけど/伊舎堂仁「ビッグ・アイズ」
→「殺」だけ漢字になっています。際立ちます。
殺意はあるけど、そのための凶器がなくて殺害にはいたらない。意欲はあるけど、そのための手段がない。
ホッチキスという道具の選択もうまいところです。頑張れば武器になるかどうか、ギリギリの線上にあります。

ホッチキスを持った状態で、何をどうすれば「殺しにきた」ことになるんでしょう。わめいたりしたんでしょうかね。ホッチキスで殺そうとしているさまを想像すると、かなしくもおかしいです。



ブラジリアン柔術王の隣人が奢ってくれるフルーツトマト/泥ロボ「へいキング」
→ブラジリアン柔術王の隣人はいないんじゃないか、想像なのに「フルーツトマト」が妙にリアルで、そこがいい歌なんだと読みたくなります。

今月の「塔」で三井修さんが、99パーセント無いからといって嘘と決めつける読みを戒めていました。残り1パーセントがあるから歌にした可能性もあると。

まあそうなんですけど、ここは「なんたる星」で何が飛び出してきてもおかしくない場所なので、これはこういうものということで、真偽を気にしすぎないように読みたいです(ってもうかなり気にしてますが)。塔の歌会で出てきたら、事実だろうと思うかもしれません。事実ばかりの場だから。

(これもあとで、実際に近いことと聞きました。世の中は珍しいことがいっぱいありますね)


ポカリもちくわもホッチキスも、このフルーツトマトもそうですが、道具選びのいい歌にオレは丸をつけやすいかもしれないと、今回は特に思いました。歌を読むときにあんまり名詞に気をとられすぎてはいけないと読んだこともありますが。


後半は「いしゃどうナイト」で、伊舎堂仁さんの歌集『トントングラム』についての座談会です。おもしろそうな歌集だなと思いました。




以上でおわります。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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