FC2ブログ

〈結社誌読む 141-2〉「未来」2018年10月号・800号特集


「未来」2018年10月号のつづき。


9月号にひきつづき、10月号には800号の特集である「二〇一八年度未来歌集」が100ページほどある。
これは、参加者による自選10首とプロフィールとエッセイで、作者はあいうえお順にならんでいる。



陸に来てはじめて濡れていたことに魚は気づくのだろう ください/石畑由紀子



花瓶、きみはきっと持っていないだろ 逃走をする立てこもり犯/岩田あを

→犯人に対して言いたいことがこれなのか。見当違いなようで、しかしここに核心があるのかもと思わせる力があった。

電気グルーヴは「N.O.」のなかで「学校ないし家庭もないし」~「花を入れる花ビンもないし」と歌った。



いつ迄も手を振る母の見ゆる故ひとつ手前の角を曲がりぬ/香月弘子



 (オー)という一文字(ひともじ)の名の村があるノルウェー海へ果つる岬に/きさらぎあいこ



お子様ランチの残り押しつけらるるゆゑやや小盛りにて注文す俺氏/黒瀬珂瀾

→「俺氏」って短歌ではじめて見た。ネットの匿名の場でおもしろおかしく自分語りをするときに使う一人称、とでも言えばいいか。自虐風自慢、なんて言葉も少し前にはあった。



埋もれし元のわが身を掘り出だすこれダイエットの本位なるべし/黒部美栄子



思い切りフォークを刺せばひとかけの苺を吐いて自壊するパイ/道券はな

→パイに思い切りフォークを刺す、そのこころをおもう。パイは苺を吐いたが、この行為にこの人の何かが吐き出されているのだろう。
道券さんはエッセイもよかった。荒川弘の『銀の匙』の話から、短歌をしている理由へ至る。



人類の滅亡までの暗喩だと思ってみてるピタゴラ装置/中田美喜



里帰りすれば実家のカレンダーに一朗とだけ書かれている今日/中山一朗

→これは「一朗」という名前がいい。里帰りっぽい名前だから。……というと変かなあ。オレの名前だとこの味がでない。



会ひたいと思へばみづに砂うごき金魚の影が腕にゆれたり/野田かおり
→砂のうごき、影の揺れで金魚のうごきを描いている。それは心のうごきでもある。



「困ったことがあれば言えよ」と父は言う鼻から腸に管を入れつつ/茂木敏江



あやまつて落ちてしまつた湖底から見上げるやうな夜明けのひかり/山木礼子

→湖に落ちてしまったら底では意識がなくなっていそうなものだが、ここでは光のほうを見ている。生きた人間の目ではない気がしてくる。だいぶぼんやりとした光を、それを見上げる目を想像する。



以上あいうえお順でした。









オレがこの特集に出した自選10首。



工藤吉生

2015年「塔」退会、「未来」入会。2017年度未来賞。



このオレの入浴シーンを謎として見る猫アリス牝7ヶ月

解答欄ずっとおんなじ文字並び不安だアイアイオエエエエエエ

小さな子小さな足をのせている小さな車いすはゆっくり

殺人をしてしまったら殺人をしてない人に憧れそうだ

針の穴を通った糸はそれまでの糸よりやる気を感じさせるぜ

シューティングゲームのうまいやつが来て雨粒全てよけて帰った

ぼくは汽車、汽車なんだぞー! と駆けてきた子供がオレにぶつかって泣く

ぱぴぷぺのポップコーンに固いのがあって口からいま出すところ

祈りとは声も指先も届かない者にダメ元で伝える手段

生命を恥じるとりわけ火に触れた指を即座に引っ込めるとき




以上です。
んじゃまた。




▼▼▼

【こっちもおすすめ】

noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




2018年8月のオレの短歌とその余談/連作の歌のつなぎ方
https://t.co/A139XJ2pSk

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【1】
https://t.co/9LDZrsWmr0

【2】
https://t.co/lcoeLM1kt6

【3】
https://t.co/f993MV2JHS

【4】選考座談会・前編
https://note.mu/mk7911/n/ncbc826b3e18a

【5】選考座談会・後編

https://note.mu/mk7911/n/n44d84c9e74f6
2018年の短歌研究新人賞の自分のことについて、思うぞんぶんに書き尽くしました。また、選考座談会で言われたことへの応答。




などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。






スポンサーサイト



プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

最新記事
リンク
月別アーカイブ
フリーエリア
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR