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『昭和萬葉集 巻七』を読んだ


昭和萬葉集 巻七を読む。
「昭和萬葉集」は大規模な短歌のアンソロジー。
以前「巻六」を読んだが、
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52204643.html
そちらは開戦と戦時の様子がおさめられていた。巻七は敗戦とその直後の日本。



軒下にひそかに人の佇(たたず)みてわが家のラジオ聞くらむ気配す/藤田菊次



悉(ことごと)くわれらだまされこの日迄ひきずられしといきどほりいふ/内田穣吉



わが面(おもて)人にみらるることすらも堪(た)へ難(がた)きかな国は敗けたり/対馬完治



国に人に念(おも)ひしきりなる夕まぐれくらきたたみに足袋(たび)を穿(は)き居(を)り/五味保義



燈火管制(とうくわくわんせい)解(と)かれたる夜(よ)の窓の燈に遠くまで見え光る雨脚(あまあし)/鈴木三郎


玉音放送の歌からはじまっている。最初に引いたラジオの歌も、そういう歌。
それから原爆の歌がある。



子と母か繋(つな)ぐ手の指離れざる二ツの死骸水槽より出ず/正田篠枝
→正田篠枝について解説がある。GHQに見つかったら死刑になると言われ、死刑になってもよいという決心で、原爆の事実を描いた歌集『さんげ』を発行したという。



アー水ヲクレマセンカァ 咽(のど) ノド 痛イイ 夜ガ明ケンノウー/豊田清史



休戦の午後に戦死の兵一人楡(にれ)の太樹の下べにて焼く/高橋房男



砂原に玩具(ぐわんぐ)のごとく積まれたる兵器の中へ我も銃を捨つ/吉田由次郎



白木の小箱いだきしむれど音もなく骨(こつ)なき柩(ひつぎ)のこの軽さはも/山田よね



北とのみ生死(せいし)もわかね雪降れば夕凍(し)む空に祈らざらめや/権藤竜夫



勝利者の誇り露(あら)はに投げくれしパンの一片拾はんとしぬ/高田林



シベリアのでんでんむしはうまかりき十三匹を焼きて食ひたる/添谷武男



背中に子を両手に鍋釜(なべかま)さげあるく避難民の図とみづからは識(し)る/仰木実

→「三十八度線突破」という章から。移動する人たちの歌もたくさん収録されている。
写真や映像を通して見ていたものが、こちらへ一歩近づいてくるようだ。避難民の図と同じと知っていながら、そうなる。



万歳(ばんざい)の声に送られ出でしかど潜戸(くぐりど)押してはひとり帰り来/武安千春



恐ろしきもの見るごとく家族(うから)らは義足をはづす弟みるも/城中俊



おろかしく螺旋(らせん)階段焼けのこり雨の日赫(あか)く濡(ぬ)れて滴(しづく)す/中村正爾



粉雪(こなゆき)をうなじにうけて煮るかゆの鍋の中にもしとど降りける/柳瀬綾子



パンパンガールにて身を過すありパンパンガールの服を縫ふわれのごとき生業(なりはひ)のあり/八木下禎治



アララギを The Yew と訳しアメリカ軍司令部に届をしぬ/五味保義



進駐軍来るの噂(うはさ)に戦死者の墓標毀(こぼ)ちぬ何を憚(はばか)りし/小宮山カウ



もう二度とだまされぬぞ と思ひながら今も何か だまされてゐるやうな気がする/新藤達三



新しくせまる暴力をわが思ふ暴力は何時(いつ)にても理論を持てり/小暮政次




喜びて吾子の持て来し教科書を見ればあはれなりただ十三頁/藤井正美



弁当をとられし子あり机などあけて調ぶるわびしききはみ/北村まつ



畦道(あぜみち)に児等の一隊通りたり裸足(はだし)下駄穿(げたば)き草履(ざうり)ゴム長/岡本秀司



作業場の大東亜共栄圏地図はづさむと張りて久しき埃(ほこり)を払ふ/三宅豊志



買ひてやる何もなければ蜻蛉(あきつ)とぶすすきの原に子を連れて来ぬ/太田青丘


巻六のときと同じように、最後の章は自然や風景の歌が収録されている。

夏の陽に焼かれて日日をあるばかり石は花々のやうに開かず/杉原一司



柿の実の熟(う)れたる汁にぬれそぼつ指の先より冬は来にけり/谷崎潤一郎



歌とせぬ吾が生き方の或る部分歌とせぬ故君らは知らず/小暮政次

→「第二芸術論」から。この本はそういう出来事もおさえてある。



いかならむ埃及(エジプト)びとのかなしみぞ群像のひとり燭かざし持つ/鈴木英夫



たまたまなのか、この本は茂吉の歌ではじまり茂吉の歌でおわっている。
聖断(せいだん)はくだりたまひてかしこくも畏(かしこ)くもあるか涙しながる
ではじまり、
最上川の流のうへに浮びゆけ行方(ゆくへ)なきわれのこころの貧困(ひんこん)
でおわる。


内容が内容なので、なんとも感想を書きにくい。



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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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