北杜夫『茂吉彷徨』を読む  ~咲く花は咲きつつありて、ほか

北杜夫『茂吉彷徨』。1996年、岩波書店。

これはシリーズの三冊目にあたるんだそうだ。
昭和のはじめから戦争あたりまでの時期の茂吉のことが書いてある。『作歌四十年』という本での茂吉の自歌自解が紹介されていたり、資料をもとにして出来事がまとめられていたり、著者みずからが見た茂吉の姿やエピソードが書かれている。

はじめのほうには、茂吉が論争をするときの激しさが書かれていた。
太田水穂との論争では「僕にかりそめにも刃向ふごとき者がゐたら、皆死ぬ。水穂もそろそろ要心をせよ」などと書いている。



雪の降るまへのしづかさの光ありて陶然亭(たうぜんてい)を黒猫あゆむ/斎藤茂吉


咲く花は咲きつつありて芽(め)ぶかむとする山のおとこそ寂(さび)しかりけれ/斎藤茂吉




あまり詳しくは知らなかったダンスホール事件や、永井ふさ子との件がくわしく書かれていた。永井ふさ子との恋の話は、茂吉のいやな部分が強く出ていて、なんともやるせない読後感があった。

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永井ふさ子について調べればすぐこういうのは出てくる。
『茂吉彷徨』では手紙を多く引きながらこのあたりのことを追っている。



過(よ)ぎらむとするのか否(いな)か不明にて歩道(ほだう)に来たる黒猫(くろねこ)ひとつ/斎藤茂吉『寒雲』



怒った時の茂吉。
『怒ったときは、一度怒鳴って、一旦廊下を歩いて去ってから、また戻ってきて怒った。それを幾度も繰返した。つまり、一旦向うへ行くのは何とかして憤りを静めようとするためであった。』

オレは猫でそういうのを見たことあるよ。ちょっとエサを食べたらぐるぐる歩き回って、また食べるの。



『茂吉の本の背表紙などの活字はいずれもごく大きい。それは「目立って、一冊でも多く売れるよう」考えられたものであった。それを多くの歌人たちが模倣した。』



日記からも多く引用されている。本の終盤では戦争に興奮する様子や落胆の様子が日記からわかる。



そんなこんなで、北杜夫『茂吉彷徨』は茂吉のことが色々書いてある本だった。おもしろいエピソードが多くて飽きなかった。
おわり。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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