「うたつかい」2014年1月号(第17号)を読む  ~長ネギの話、ほか

うたつかい2014年1月号から、7~8首くらい選んで何か言います。



もう誰を信じていいかわからないここから海はすぐそこなのに/いないずみ。「やさしい夜遊び」
→海というものの、なんでも受け入れてくれそうな広さ大きさといったものが背後にあるのでしょうか。




長ネギの話が可笑しかった日に手帳に書いた風船の歌/二葉吾郎「ひさかたの手帳」
→オレはこれはかなり良い歌だと思っているんです。「長ネギの話」だけではなにが可笑しかったのかわからない。でもなんとなく長ネギの可笑しい話というのはありそうに思う。提示されていなくても、確かにそれはあると思う。この力はなんだろう。
この長ネギは動かない。玉ねぎでも長なすでもダメだ。

長ネギがなんとなく可笑しそうなのと同じように、風船はどことなく詩的だ。浮かぶこと、割れることから導かれる印象だろう。風船の歌、だけではやはりどんな歌かはわからないのだけれど。それが余白になっている。
一日のなかに、たのしいこともあれば儚いこともある。



ありがとう夢見てくれてありがとう不味いラーメン見つけてくれて/松木秀「フェイク」
→うたつかいにこの方が参加したことは、もっと話題になってもいいと思うんだけど、全く聞かないなあ。

「不味いラーメン」だけが浮き上がってくる歌だ。美味いラーメンならそれすら浮かんでこないだろう。
不味いラーメンのおかげで不味い不味いと話題ができ盛り上がることを感謝していると読んだ。あそこは不味いと聞くと余計興味を持ったりワクワクしたりする。
夢見るものが不味いラーメンの発見なのだとすれば、夢というイメージに対する強烈なギャップとなる。



寂しさで凍り付くのはまぁ普通 なんかうっすいココアができた/南葦太「やるしかないね」
→温度を感じさせる「凍り付く」から、濃度をあらわす「うっすい」への転換。
ココアをいれているひとりの日常であるが、深刻ではない。「なんかうっすい」のくだけた調子が楽しい。




お土産に金星珍味・亜硫酸ガス大福を買って帰ろう/焼きみかん「宇宙小旅行」
→宇宙旅行なんだが、それがことごとく現代の日本みたいで、そこにおかしみのある連作。一方、地名の部分を日本の地名にしただけで平凡な作品になるという弱さももっている。
この歌は「亜硫酸ガス大福」というのが面白い。オレは食わないけど……。




殺したい人の順序を並べ替え軒下に尖るつららに触れる/ユキノ進「新潟五景」
→「殺したい人」で始まる歌をすぐ思い出すが、まあ置いといて。
つららというのは頭に落ちると危ない。それが天罰のようでもある。また、つららは一本ということはない。何本も連なるものだ。それが憎しみの強さ、天罰をくだす順番のようだ。



いつまでも誰かのせいにしてるから強くならずに生きてゆけるね/六条くるる「生きるんてつらいなぁ」
→なるほどと思った。



選んだ歌は以上です。取り上げるか迷ってやめた歌はけっこうあります。




フォークランド諸島の長い夕焼けがはるかに投げてよこす伊予柑/服部真里子

→たたさんのコーナーから。町とか京大短歌とか、見ることのない本からたくさん歌が引かれていてよかった。



以上です。



付記。
この本について感想をツイッターに書く場合、よく相手へのリプライの形にして、名前に「さん」付けしたりするが、オレはそういうことはしない。そういう決まりもない。自分のやり方でやる。
だいたい、自分の歌への反響を探さないような人はあんまりそういうことに関心がないのだから、無理矢理届ける必要はない。オレは作者のために感想を書いてるつもりがない。
一人とか仲間うちだけで詠んでるのが楽しいという人もこの本の投稿者にはいそうだ。
タグをつけるのを推奨しているのでタグはつける。それで充分と考える。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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