短歌研究2013年7月号を読む【後編】  ●特集3 わたしの好きな恋の歌

特集3は「わたしの好きな恋の歌」。今月は特集が三つもある。男性歌人による相聞歌の特集。

恋であれば、一般的なことより、その人自身がどんな恋をしたとかどんな気持ちになったかが聞きたいとオレは思う。そういう意味では辻井竜一さんの書いたものが一番生き生きしてて面白いし、引いてる歌も良かった。
文章と引いた歌が良かったと書いたんで、ご本人の歌のことは書いてませんからね。

我が心我のみ知る!といひしまま秋の野路に一人我泣く/中原中也

→「我」が三回も出てくる。そこから他者を求める気持ちがにじみ出ている。


みつめたる石を拾ひて投げてみる此の我が心空虚を覚ゆ/中原中也

中原中也の短歌は知らなかったけど、いいね。



衆視のなかはばかりもなく嗚咽して君の妻が不幸を見せびらかせり/中城ふみ子

佐佐木頼綱さんは男性歌人が中城ふみ子みたいな鋭い歌を詠んでないと言う。そういう頼綱さんこそが犬の歌で逃げている。これは、逃げだよ。自分の恋からの。
しかもユーモアにしても成功してない。三首目にオチをもってきたつもりだろうが、二首目で人間じゃないとわかる。カタカナ表記がすでにペットっぽい。

中城ふみ子はすごいんだなと思った。身をけずってる感じだ。男はこういうテーマであんまり削る気がないんでしょう。自分のそういうこともあまり書かないし。この特集見て、ああ削ってないなと思った。プライベートを書くのもあれだしね。難しいですよねこれは。






作品十首。下の欄の歌が時々面白いし、ここだけでもいい。

まひまひの生まれたばかりの子の背にも貝がある、痛々しいではないか/渡辺松男『蝶』

→ちょっとした発見だけど、「痛々しいではないか」という言い方だよね。生まれながらにして何か宿命を背負ってるみたいだ。
「ではないか」いいな。たくさんの人を前にして訴えかけてるみたいだ。

渡辺松男さんが今になって気になる。自然をひらがなばっかりで詠む、っていうイメージしかなかったんだけど、だんだんそれだけじゃないとわかってきた。「新・百人一首」に載ってた三首がとてもよかった。

ところでこの歌を引用してる鵜沢梢さんという方は赤ちゃんかたつむりについて「歌を作ってみたが、あまりうまく感動が表せなかった。」と書いてる。
うまくできなかったものをこんなとこにでかでかと載せるんじゃねーよ。載せるんならうまくできなかったとか言うんじゃねーよ。



ねんごろの見舞ひなりしが去りぎはに人のいのちを測る目をせり/大西民子『風の曼陀羅』





藤島秀憲さんの連載を見てると、よく笑いの歌をこんなに引っ張ってこれるなあと思う。
そこから一首。

〈立ち姿賞〉あらばかならず一等に推されむまふゆのメタセコイアは/田中あさひ『まひまひつぶり』





作品季評。オレこのコーナー地味に好きなんだよね。
写真があるけど、栗木京子さんだけつまんなそうにしている。同じ結社だから言うわけじゃないけど、いい写真使ってあげてほしい。だって黒岩剛仁さんなんか会心の笑顔じゃん。赤塚不二夫キャラか。


前の席の女男の身じろぎもせずに近親相姦を見る/駒田晶子「日の浦姫物語」

本当のわたしってイテテアイテテテアイデンティティはイテテさがすな/駒田晶子「日の浦姫物語」


→アイデンティティーを取りだそうとして体中を引っ張ったりでもしてるんだろうか。

歌書の紹介のページから一首。

捩じ込めり交換日記を土砂降りのまんなかに立つ百葉箱へ/佐藤羽美『ここは夏月夏曜日』

→人と人との間で交わされる交換日記をこういう場所に入れるのは、二人の間で何かあったなと思わせる。捩じ込むという動作の乱暴さ、土砂降りという天気が劇的な効果をあげている。





短歌研究詠草は三首以上載った人の作品を見て、あとは名前だけ見て知ってる名前があれば歌も見る、という形にしている。
全部読んでたこともあったが、全部読んでもあんまり面白くないことがわかっただけだった。
今回、これといった歌はなかった。オレの歌もこうしてみるとしょぼいな。

短歌研究詠草に送るのやめたって前にもツイートしたけど、その理由のひとつに、「ここで高評価を得ている作品の良さがあんまりわからない」というのがある。
「つまんねーのがほめられてるなあ」と思う場所に自分が載ってもしょうがない。連作で見られる形も自分に合わなかった。

今月は三首以上のしか見てないのに嫌なのがあった。

「事象」とか「事案」とか言ふ男あり さあ、さあ、みなさん、眉に唾を/斎藤寛

不愉快な揚げ足とりだ。

「○○とか××とか言ふ」っていうのだっておかしいんじゃないの。「とか」の軽さと「言ふ」の表記がちぐはぐじゃないか。 人の日本語を攻められるほどの言葉かよ。自分のことを棚に上げたらダメなんだよ。
他の歌も意地の悪さが出ていて不快だ。選歌のセンスを疑う。





最後にうたうクラブやりましょう。今回注目したのはこれ。

サンドから転げ落ちたる茹で卵潰さぬように摘みて食す/高橋秀

これがコーチされてこうなった。

手にとればパンから卵あふれ出てひとかけら落つトレイの上に

これ、改作が21種類もあって、すごく熱心にやってるなって思った。そこまでしてサンドイッチから落ちた卵のことをうまく詠みたかったのかと。
それでも「パンから卵あふれ出て」がうまくいってない。サンドからなら「卵サンドからはみでたのか」ってわかるんだけど。

改作って難しいよなあと思う。オレはこのコーナーでうまくいかなかった体験があるから、ここで良くなってるケースについてはえらいと思う。アドバイスが良くてもそれをいかすのは簡単じゃない。

佳作については星のある歌と知ってる人の歌だけ読んでます。今回は丸つかなかった。
自分の歌については、気に入ってる歌なのでここから世に出せて良かったです。

来月の予告見てたら若山牧水やるんだね。牧水は三首くらいしか知らない。白鳥と白玉と幾山河。特集楽しみ。

といったところで今回はこれで終わります。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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