くどうよしお短歌集「駆けつけ65首」

駆けつけ65首



作:くどうよしお







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あの人を呪い苦しめ狂わせて後悔させる歌を教えて





ラララララ ラララララララ 字だけでは伝わらないがすごい歌です




母の歌ひとつひとつの間違いを教えてあげても戻るキッチン




歌ってる端から嘘が紛れ込む 嘘をつきたい気持ちはほんと




歌う時口から音符が出るのなら右手にマイク左手に袋




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ドラえもん
コミックの隅
書いてある
パラパラマンガが
50ページまで





欲しい道具
きかれた時に
堂々と
「スケスケ望遠
鏡」と言いたい




もし君が
石ころぼうし
かぶっても
僕は見つける
君だけを見る




 ▽




この星を
覆い隠して
よいものは
ひとつもないと
知れバイバイン





一方で
ジャイ子はのび太を
あきらめて
漫画を描いた
ずっと一人で






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女子が泣く「男子もちゃんと歌ってよ!」修羅場育ちの大地讃頌




教室の聞こえよがしの非難から逃げたトイレの壁は冷たい




学級会 トイレでズボンを脱がされた話にみんなで耳すます午後




原爆の詩を読む昼の放送をバックにおかわりめぐるジャンケン





指されてもわからないから黙ってる「座っていい」しか聞きたくはない





算数の問いに出てくる子のように道に迷わず暮らしてみたい




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憎しみを社会に向けて人に向け自分に向けてそこで落ち着く




5000円 母が暮らしに困り果て質屋に入れた結婚指輪




戦いに行きはしないが深刻なポーズをしてるガンプラとオレ




絶対に反撃しないモグラだけ選んで叩くような賢さ




「死ね」という言葉によって君の持つ説得力が自殺したのだ




安全を求めるうちに狭い方暗い方へと追われる獣





大声で泣けば誰かが来てくれて自分が正しい気分にもなる




こんなにも自分のことを棚に上げなんでも言ってのけるよ 人は




世界から悲しいことをなくすため消えてもらった最初の一人




手のひらが徐々に携帯端末と一つになってゆく進化論




アドレスのダブリュー3つが君のこと笑っているぞ煽り返せよ





絶対に勝っちゃいけない戦いがそこここにあるサムライの国




目的のために手段は選ばない 障害者用押しボタン連打






もし君がどんなに偉くなったってオレが尊敬することはない




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「どうでもいい男ばかりが言い寄ってくる」と聞こえてズタズタになる




愛の裏の裏の裏の裏の裏 きみ守るため握ったナイフ




「こんにちは」「さようなら」という10文字の中から愛を探すしかない





 ▽





君の足ショパンのワルツのリズム踏む 性病治療を待つ広い部屋




くじ引きとケーキ目当てのブライダルフェアで引きずるドレスの重さ




おっぱいがあたる気がしてうっとりと開けた口へとドリル挿入





太ってる女性が座っていた席に別の太った女性が座る




 ▼




2リットル水をくむため並ぶ列どんな人気の店より長い





閉め切ったファミリーマートを覗き込む男が去らぬ3.13




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噛む加減知ってる猫を傷つける言葉の深さ知らないで抱く




この猫は元は人間だったけどなんかのアレでこうなったっぽい




追いかける猫の眼光 それをまだ生きた獲物と信じてるのか





このオレの入浴シーンを謎として見る猫アリス牝7ヶ月





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落ちたものフーフーすればまだ食えるフーフーせずに食っても平気





歯についたチョコフレークを指で取りひとりぼっちを謳歌している





30匹いるとされてるゴキブリの残り29匹の幻




[]内単語バラバラ殺人の[発見、容疑者、された、全裸で]





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「なんか」って付けなきゃ話せないんでしょう NOW LOADING と思って待つよ




組み立てた線路に汽車を走らせる少年の背を陽が包み込む




朝早く自転車こげば誰にでも挨拶をする人が流れる




西村の表札の字が巧すぎて西村の家なのかわからん




朝起きて「おやすみなさい」のメール見てそれに答える日本語がない




1日の3分の2をしたくないことをするのに費やす勇気




絵日記の中の家族が一列に並んで立って笑うのを見た




殺人をしてしまったら殺人をしてない人に憧れそうだ





黄色い紙 郵便受けに入ってて読んで捨てたらまたも黄色い




人生をやってることにはなってるがあまりそういう感じではない





ヒョウ柄の強そうな人を後ろから見ているオレの柄はチェックだ





 ▼





解答欄ずっとおんなじ文字並び不安だアイアイオエエエエエエ




ノイシュヴァンシュタイン城を取り囲む木々もあるいはまた城である





プロ野球選手のカードを集めるがG.G.佐藤ばっかり当たる




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トラマナと寝言で唱えた弟よ 毒の沼地の中で目覚めよ





ぷよぷよのように連鎖をして消えろ 展望台を埋めるカップル




この世から悪を滅ぼし永遠にその名を刻む勇者ああああ




リセットを押しながら切る電源のように最後は目をつむりたい







 ■



2011年の夏から短歌を始めた。1300ほどある短歌から今回65首選んだ。どこかで選ばれたものや反響のあったものを優先的に入れ、自分で気に入ってるものも選んだ。
ドラえもん、学校、震災、猫、テレビゲームなどを詠んだ。
当分はこれをオレの短歌のプロフィールとしたい。

なおこれは2012年3月にアップした「くどうよしお短歌集 居留守」70首 http://bit.ly/PR0UIt を更新したものだ。十数首入れ替わっている。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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