角川短歌2012年8月号を読む

作品28首、作品10首




巻頭は篠弘さん。内容は多岐にわたる。一首選ぶ。

このわれがまだ挑みうる思ひもて槍投げをする角度を聴けり

競技を知れば観戦は楽しくなる。気持ちが若いのはいいことだ。





月に棲むことさへ可能の人間となるのかたんぽぽ噛めば苦いよ(日高堯子)

(噛むは人が四つある方の字) 面白いコントラスト。たんぽぽ噛んだことないけど噛んだら苦そうだなあ






密室のグレン・グールド鍵盤の原生林に踏み入りしまま(松平盟子)

うまいこと言いましたね。原生林といったらカナダ。グールドはカナダのピアニスト。そして密室と原生林の対比。手で引く「鍵盤」と、足でペダルを「踏む」のも。





はるかにも人間の叡知とどきゐて太陽は黒く欠けはじめたり(石川恭子)

同感。日食などが、いつ起こるか・どこで見れるか、よく正確にわかるなあと、その知恵に感心したものだ。





呆けの検査を全問正解で切り抜けし人のくるまに運ばれてゆく(中地俊夫)

ユーモラスな歌が多い。打率高いと思った。





超世代対談

座談会とか対談とか、他では文字に起こすのに、なんでこのコーナーは概要だけなのかと物足りなく思う。もしかしたら録音しても聞きとりづらくて字に起こしにくいのかな、話がくどいとか、何度も聞き返してるとか、途切れ途切れに話してるとか、長さの問題があるのか、などと想像する


岩田正さんが中年にしか見えないとか書いてあるが、写真ではどう見ても老人だ。会って話すと若々しさのある方なのだろう。





特集 河野裕子のボキャブラリー

河野裕子は「ざんざんばらん」と「ガサッと落葉」の歌くらいしか知らない。勉強になる。

高野公彦さんの文章では、口語のことと、扱うテーマが家族中心であったことが書かれている。




投稿のハガキの山の間に沈み永田和宏あくび大明神(河野裕子)




青林檎与へしことを唯一の積極として別れ来にけり(河野裕子)

これもいい。あの時飴くれた女の子元気かな、とか思い出した




死にも死はあるのだらうかとつぷんと湯に浸りつつあると思へり(河野裕子)

伊藤一彦さんはオノマトペという角度から論じている。いろいろあって面白い





美しく齢を取りたいと言ふ人をアホかと思ひ寝るまへも思ふ(河野裕子)

都合のいいこと言ってんじゃないよ、って感じか。寝る前にまた思うっていうのがいいな。意識の深い部分に響くテーマだから思い出したのか。





河野裕子の関西弁について書いてある。方言を短歌に取り入れるにしても考えながら控えめにやっているようだ。




光森裕樹さんは色という切り口で書いている。茗荷、と書いてミョウガと読む。ミョウガの花はわずかに黄色い。メモ




書くことは消すことなれば体力のありさうな大きな消しゴム選ぶ(河野裕子)

特集を読み終わった。ご家族が書いたエピソードや写真のページも面白く読んだ。





作品12首

良さげなものを抜粋  

病棟の並びて建てばこの窓に見える向かひの病棟の窓(由良琢郎)




電柱は傾きしまま点しゐてみづからの脚照らしつづける(由良琢郎)






描きかけのイラストそのまま貼り付けてわが同人誌廃刊とする(小塩卓哉)

イラストも完成させる気力がなくなったのか。同人誌の廃刊ってこんな感じなのかな。





傘のみが塀の向こうを通り行く人恋しかり午後の一人居(小塩卓哉)

情景が見えるようです。




監視カメラのあかぐろい眼球に十一階の欅はそよぐ(魚村晋太郎)

監視カメラには自然の美しさなんて映らないんだろう。欅は罪を犯さない。





眠らせる薬はいつも白くあり淋しいひとを眠らせていた(後藤由紀恵)

12首全体に静かな叙情があって良いと思います。




誰のことも見送りもせず出迎えもせず狭き玄関に百合の匂いぬ(後藤由紀恵)

百合の香りが人を見送ったり出迎えたりしたがっていたかのようです。





特集「私を支えた歌論・歌評」

清水房雄のが面白い。歌会で土屋文明に「平凡だね。はい次っ」とだけ言われた話。また、五味保義は、作品のところどころに赤で傍線を引いてその部分を考え直させるという指導をしたという。



吉川弘志の「読者と共に考える評論」から。
ほんのわずかなものを写生することによって、写生できないものの奥深い生命感に触れることができる。それが〈写生〉の根源にある思想かもしれない。




アンケートハガキ

アンケートがついてた。これって初めてみたけど定期的なものなのかな。

希望の付録とか言われても思いつかない。雑誌付録といえばバッグのイメージなんだが、茂吉バッグとかあってもいらねえしなあ。



短歌をどこで学んでいるか、という質問があり選択肢が
結社
カルチャーセンター
通信講座
だった。主にこの三つをやることが短歌を学ぶことなのか。どれもやってない。結社はちょっと気になってるところ。





「名歌」で学ぶ文語文法

ためになる。自動詞の連用形に「ぬ」、他動詞の連用形に「つ」。「ぬ」を強め積極性をもたせた「つ」。





作歌のヒント

恋の歌が上手くなるヒントが書かれている。それは
▼広く古典を読め
▼生活者の視点を持て
▼質の高い恋をする
みたいな内容で、簡単ではないことが伺われた。オレも苦手な分野だ





題詠「電車を詠う」

電車って愛されてるんだなと思った。


ふみ切りの棒がふらふら降りてきて我が影轢きて電車通過す(川出香世子)

不吉で好きだ。棒は歩行者を守るものだが、しっかり守ってる感じではないな。





発車ベル無くなり車輌はすべり出すこんな無防備な別れは悲し(高原敦子)

(高は上の口がつながってる方の字)読んで悲しくなった。どんなふうに別れても悲しくなるのは避けられない気がする。





書評

工場と倉庫の並ぶ波止場地区 殺風景は風景である(香川ヒサ)




液晶に点る名前を電話機は得意気に告ぐ電子訛で(鈴木美幸)

電子訛、がうまい。





歌集歌書を読む



赤ペンをにぎれば眠り吊革をつかめば眠る コンニャクわれは(松尾祥子)

眠る自分をコンニャクになぞらえるのが、つかず離れずでいいですね





それぞれの苦悩が一語で記された退学理由の一覧を見る(新谷休呆)

5首引用してあるが、どれもよいと思った。





今閉めしドアもう一度ひらいてもおそらくただの夜の冷蔵庫(朝井さとる)

この人の5首も、どれもいい。冷蔵庫を開けると生首が入っていて、何度も開け閉めしてしまうコピペを思い出しました。





あんなにはもう飛ばせないわが前をつつきつてゆく皮ジャン野郎(阿部照子)

作者は81歳というが、かつてはかなり飛ばしていたんだろうか。





大根をきざめば忽ち大根にまつはる哀しみ甦るなり(佐藤みちや)

その哀しみは本人にしかわからない哀しみなのだろう。どんな哀しみか言わないところが哀しい。





公募短歌館


亡き妻の嫁入り道具鏡台を覗けば我の顔を映せり(安達勝)

妻が見えるような気がしたのかもしれない。





ケータイの中でナメコを育てゐる友ありどうしてナメコなんかを(丸山順司)

友なら本人にきけばいいんだけど、「ナメコなんかを」が面白い





私を置き去りにせしそのわけを夢覚めたれば知るすべあらず(宮嶋千恵子)

置いてかれる夢あるよね。わけもわからずに。無性に悲しくなる。





ジーパンのうしろポケットに差し込みし携帯ふいにお尻震わす(盛田五三郎)

女性じゃないのか……と思った。「うしろポケット」が造語っぽくていい。考えてみればほかに言い様がないけれど。





以上になります。
選者の中では米川さんの選び方がいいな。コメントも的確だと思う。

苦手は松坂さん。「最近の若者はなっとらん、日本はなっとらん」みたいな自分の主張に合う歌を選んでる印象




選者は読者の歌を選ぶが、読者も選者の選び方や評を見ている。とくにこの形式だと誰が何を選んだかはっきりしているからそれがよく見える。




 
スポンサーサイト
プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

最新記事
リンク
月別アーカイブ
フリーエリア
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR