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角川「短歌」2012年6月号を読む

角川短歌を買ってパラパラとめくった。
特集は、60代からの短歌→斎藤茂吉→ときて今回は「挽歌」だ。シニアな雑誌だなあ。公募短歌館に知ってる投稿者はひどく少ないが、あきらかに名前の体をなさぬペンネームの方がいたのが目立った。




巻頭作品28首
栗木京子を読む。震災を軸にしている。なかなか良かった。
翼あらば行き得しものを 海底に沈みしあまたの靴は嘆くや(栗木京子)



特集 挽歌
挽歌の特集の小島ゆかりさんの引く歌が良い。

農に生き農に終えたる亡き父の背広より出ずパチンコ玉二個(吉原三保子)




つくほうしつくつくほうしつくつくほ 寂しいぞ母のあらぬというは(大下一真)




痩せ細りしむくろの君は献体者登録番号を燦然と持つ(森下達也)






「現代挽歌秀歌選45首」秋山佐和子選 から。

死にゆけるものつねに他者みづからの丈くらぐらと渚にうつす(島田修二)




ししくしろ黄泉のものなる父の貌しきりあらはる光の襞に(日高堯子)

「ししくしろ」は黄泉にかかる枕詞だという。初めて見る。





死後のわれは身かろくどこへも現れむたとへばきみの肩にも乗りて(中城ふみ子)





作品12首

チューリップはらりと散りし一片にゴッホの削ぎし耳を想ひつ(木村草弥)




にんげんの居らぬむかしに戻るぞと地球に言はれりゃ何が出来よう(藤井幸子)





医師の書く癌という字に山があり山に登って啼く口みっつ(井川京子)


捨てかけた佛花一束びんにもどすまだ生きている蕾が一つ(井川京子)


病を詠った一連だが、実力を感じた。




川沿ひに来たるライトが照らしたり 瓦礫のごとき貧のアパート(川涯利雄)





階段は一段一段降りるもの諭すごとくに母降りてくる(竹村公作)

「自動にて引き落とすことも出来ますが!」ひとの金だとた易く言うよ(竹村公作)


この一連はどれも良い作品だ。この作者の名前は覚えておく。





迢空賞 発表

迢空賞を受賞した「蝶」という歌集の五十首抄から




さへずりの中あゆみつつどこまでもさへずりあれば吾はうごく虹(渡辺松男)


しづかなるごご目薬をさしをへてあたらしきしづけさに入りゆく(渡辺松男)


犬の死ぬ直前のさま見まもれど死にし直後か判然とせず(渡辺松男)


ひと生きてただあるも摩訶ふしぎにてわが見るだれも人体は火事(渡辺松男)



渡辺松男を読んだ。ひらがなが多くて調べが柔らかい。その中に自然の詩があり、命の実感がこめられている。優れている。






追悼 安永蕗子
安永蕗子の追悼座談会を読む。

日本に依り韻律に倚ることの命運つひに月花を出でず(安永蕗子)




作品7首

作品七首を読んだ。一つも引用したくならない。やっぱり少なくしか載らない人は、それ相応なんだろう。

ワースト1は植村紀子「宵空の縦列」。『被災者よりましと思へぬ苦しみ』ってなんだ。被災者を侮辱してるのか? 被災者よりましと思えればいいのか?




「若手歌人による近代短歌研究 前田夕暮」大森静佳


自然がずんずん体のなかを通過する――山、山、山(前田夕暮)
前田夕暮は面白いな。これは自由律。  




耳そぎしゴッホの顔が我顔のそばにある如し夜をいねずをる(前田夕暮)




題詠「別れ」を詠う

特に良かったのはこれ。

向かい合い黙ったままで陽がかげり グラスの氷がカランと鳴った(野川忍)


しかしあの角川短歌の題詠のコメント欄はなんなんだ。改行という概念はないのか。無理やりな感じで一言コメントしてる。あんなコメントでももらうと嬉しいんだろうね。字数決まってて書く方は調整難しいんだろうなっていつも思う。窮屈




書評

わがうちを三千年が通過する太極拳を無心に舞へば(池内桂子)


許可証を首にぶらさげ巡りゆく塵ひとつなき防衛省舎(池内桂子)





すばしこく部屋飛ぶ虻に挑みいる〈アワまでうまいモルツ〉の団扇(市原敏司)





公募短歌館


壊れざる日常を生きるわたくしはせめてこうべを垂れてはならぬ(的場ひかり)



シャガールの恋人降りてくるやうな気配に雪の窓辺に寄りぬ(阿部啓子)





お前らも一昨日までは彼の海に暮らしてきたか。いただきます(有櫛)

よくわからないがいいな。
海苔に話しかけてるとか?




武器造る国あれば売る国ありて買ふ国あれば戦争起こる(池田毅)



絆とか頑張ろうとか書かれたる卒業色紙に「死ぬな」と記す(橋本英幸)




ペンと紙持ちて歌など練るよりも歩いた方が体にはいい(矢島孝胤)

そう言いながら歌をやってるところがいいね





ねぎ買いて包む新聞にカダフィの血のにじむ顔大写しにあり(川出香世子)






ラデツキー行進曲に手拍子をすれば独りの部屋にこだます(中村孝子)  




ベートーベンヴォリューム一杯上げみても明日の胃カメラ厳然とあり(吉田早苗)





おし、以上! 角川短歌6月号読了。「公募短歌館」は短歌研究の詠草よりレベル高いんじゃないか? 退屈しなかった。字が大きめで見やすいのもいい。
短所は、重複があり何度も同じ歌を読まされること。





 
プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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