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枡野浩一「57577 Go city,go city,city!」内容と感想

枡野浩一「57577 Go city,go city,city!」




紀伊國屋書店で購入。820円。









タイトルがうまいこと言っている。中学生の頃に国語の授業で

「fool I care, car was to become means note.」松尾芭蕉

というのを教わったのを思い出した。


行け町へ、行け町へ町へ。みたいな意味か。そして実際に内容も都会的だ。
「町」「街」より「都市」か。「CITY」は響きがかっこいい。未来っぽい。




目次はなく、4コマ漫画と組み合わされた短歌が最後まで続いている。歌集……ってことでいいのかな。

漫画をつけてるメンバーは多彩だが、絵のないものが多いのがさびしい。絵が浮かんできそうな短歌もあれば、空白が意味を補っているかのような短歌もある。短歌だけでも元々成立している。






たくさん引用しそうだから、短歌は上の句だけ抜き出すことにする。

Twitterなどで読んだものが多いが、知らないのもけっこうある。





階段にすわって朝を待ちながらゆうべの夢をうちあけ合った
最初だから全文。


最初はこんな短歌で始まる。叙情がある。




「あさがおは夏の花っていうよりか

初めて絵が出てくるわけだが、起承転結のある、いわゆる「4コマ漫画」からは遠い。2コマ目で朝顔が咲いたのに次のコマでまた閉じている。
パジャマを着て寝てるようだが、寝床に鉢なんか置くかなあ。この人の顔から何かを読みとることはできない。

コマの外には小学生らしきものがいる。この寝てる人にとって、朝顔は自分の花ではなく彼らのものなのだ。だから関心がなさげなんだろう。


あさがおをバカにしてるみたいだが、言ってる言葉遣いの方がバカっぽい。「」で囲むことによって、作者の言葉ではない感じになる。





好きだった雨、雨だったあのころの
だんだんと草に埋もれてゆくようだ。遠くなってゆく。雨も、あのころも、君も、なにもかも遠くなってゆくみたいだ。

何度も読みたくなる作品。最後の「君」から最初の「好き」につながりそうに見えて、そんなに単純じゃない。

記憶というのは真っ直ぐ順序だてて思い出されるものではない。途切れていて、重なっていて、あちこちへ飛ぶ。
そんな回想のありようを感じた。





耐性ができてしまってもう君を

「裏返しても」がいい。

風俗の用語で、同じ女性に2度サービスを受けるのを「裏返す」という。「このあいだ写真指名したコを裏返して(指名して)みるか」みたいにいう。
でもそれではないんでしょう。


君のいつも通りじゃない部分を知っても、という意味だろうけど、つい風俗っぽく読んだ。




強姦をする側にいて立っている
絵にびっくり。ギャップがすごい。強姦とは男性の凶暴なさまを想像するが、ここでは全く逆だ。





それならばイブにはダウンジャケットと

オレの周りはクリスチャンが多い。しかしオレにはそのケがない。


クリスチャンはイブ以外でも祈るものだ。鳥を殺したり食べるのが禁忌かというと、宗派によるが、禁じてる人は知らない。
宗教はなくても、儀式だけが残っている。「それならば」の「それ」とは形式ばった嘘っぽいものだろう。で、この祈りは何を祈ってるというのか、あやしいものだ。





それを見る僕のたましいの形は
「それ」と「たましい」が出てくる。

ここにも宗教のない現代を見る。

信仰心などなくても何か見えないものに訴えかけずにいられないことはある。それは祈りなのか。
「どうせ」とある。
その一方で、祈ろうなんて思えないわけだ。





百人の男がいれば二百個の

有名な歌のもじりだ。
オレはあの歌に違和感があった。メロディーからすると童謡みたいなのに、内容が下品だからだ。タヌキだったらいいのか? と思う。
だからタヌキを人間にして数を増やしてしまうのはわかる気がする。





少女らにウケるバンドのライブでは

リリー・フランキーさんの絵だ。「おでんくん」なら知ってる。

少女らがことごとくブサイクだ。「ついてー!」「イクー!」なんて言ってるの? マジで? オ、オレは信じないぞっ。





話し手をまぬけに見せる手法①
オレは「オレ」をカタカナで書いてる。まぬけかしら。
「俺」だと竜とか庵みたいでかっこよすぎる。「おれ」は意味ありげにみえる。





「ライターになる方法をおしえて」と
絵がいい。この女の帽子はいかにも頭の中がお花畑というか、勘違いしてる感じだ。

口のアップが卑しさをうまく描写してる。






カッコして笑いと書いてマルを打つ

オレは町野変丸さん大好きだ。ゆみこちゃんかわいくて大好き。そして奇想天外なんだよな。
ここでも、いきなりの急展開を見せている。



(笑)つけてても全然面白くないものっていっぱいある。多すぎるよな。






なおせとは言わないまでもその顔は

歌が顔に似合ってないんじゃなくて、顔が歌に似合ってない、と言ってる。顔をなおせと言われたら困る。

こういうのって、美しい歌に対して顔が美しくないパターンだよね。逆のパターンもあるのかな。




差別とは言わないまでもドラマでは
名前が決まってるのって、差別に近いんだなと思った。少なくとも、理解がないしする気もないということの表れだよな。




人名シリーズはよく知らない人が多い。有名人というのは、見るメディアや年代がちょっと違うだけで知名度が大きく変わるものだ。





叶っても叶わなくても消えていく
格言みたいな、心に留めておきたい一首。夢がないけど、でも実際こうだよな。わかっててもまた夢見る。


辛酸なめ子さんの絵が強烈だ。ゴキブリでかい。




つり革の輪がでかければ首つりの

同じこと考えたことある。
この一首が光るポイントは「夕焼け小焼け」だと思う。

つり革は大人が使うものだ。この絵でもわかるように子供では届かない。
おそらくは夕方、帰りの電車でつり革で死のうと思う大人が夕焼けを見て歌を思い出す。そして童心にかえる。そんな物語が浮かんでくる。この絵はそれをありありと伝えてくれる。




無駄だからやらないんだね 無駄のない

無駄だとか無駄じゃないとか、そう考える判断能力ってあてにならないよなあ。




どちらかといえばくだりの坂だった

絵がいい。レモンのセリフが「おわわ」なのもいいし、オチに気付きがあるし、相手がどうやら人間じゃないのもいい。素晴らしい。





タバスコを振りかけすぎて咳きこんで

関係ないことで風邪ひくことってあるよね。オレだけじゃなくてよかった。

オレは、鼻毛を抜いてくしゃみしてたら風邪ひいた。





満月をつい何べんも確かめる
センスある絵だなあ。
この短歌に絵をつけろと言われたら、満月描いちゃうよね? ところが描いてないんですよ。




こんじきの髪なびかせて「ぐれるにも
オレの短歌「『シャツのボタン片手で外すとかっこいい』ゴリラみたいなタカシが言った」はこれが意識下にあったんだと気付いた。

「金色」と書いて「きんいろ」と読まれたくなかったんだな。「こんじき」の表記だと色をイメージさせる力が弱くなってないかしら。ルビは嫌いだそうだし、悩ましい。




街じゅうが朝なのだった 店を出て

朝早い街のイメージ。きっと通勤通学の人々が増えて騒がしくなってきたんだろうな。
最初の短歌とつながっている。




枡野浩一さんの本の感想の記事
「枡野浩一選 ドラえもん短歌」
「ショートソング」
「結婚失格」(上)
「結婚失格」(下)
「ハッピーロンリーウォーリーソング」
「石川くん」
「一人で始める短歌入門」内容と感想(上)
「一人で始める短歌入門」内容と感想(中)
「一人で始める短歌入門」内容と感想(下)
(続)「一人で始める短歌入門」
「かんたん短歌の作り方」
「すれちがうとき聴いた歌」
プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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