中島みゆきを聴き直す★25「EAST ASIA」 - 『浅い眠り』『誕生』『二隻の舟』『糸』ほか

EAST ASIA




92年のアルバム。



オレが初めて買ったCDが、これと「時代-Time goes around-」の2枚だった。


歌詞があるだけで嬉しかった。ラジオからカセットテープに録音したものを少しずつ聞きながら紙に歌詞を書く時代は終わった。
曲が途中で終わらないし、音はいいし、曲から曲へすぐ飛べるし、みゆきさんの写真はついてるし、CD最高!と思った。




さてジャケットから。

みゆきさんの顔写真をビリッとやぶいたような第一印象だが、よく見ると白い部分は布か衣類のようだ。腕で顔を隠したのか。


このアルバムの写真は色が少ない。白い。




1.EAST ASIA

竹を思わせる音色。

この東アジアとは中国の山あたりのイメージだろうか。音階がそれっぽいし、「山より高い壁」で万里の長城を連想した。


非常にスケールの大きな傑作。


圧迫してくる何かを払いのける強さ、したたかさを感じる。それは戦って勝つのではない。「私の心」も「柔らかな風」も「地球」も、みんな笑っている。





2.やばい恋

今度は対照的に都会のビルにいる。しかもエレベーターというせまい空間だ。1番でも2番でも主人公はエレベーターにいる。
アジアの広さとは本当に対照的な狭さだ。

内容は恋の心理戦だ。言いたいことを口に出せない女性。


音楽としては孤独の肖像とか100人目の恋人みたいな感じだ。サウンドは激しくとも、ヴォーカルはささやくように歌う。




3.浅い眠り

ドラマの主題歌としてヒットした。オレは「家なき子」の頃からのファンで、ドラマを見てない。

恋の追憶。概ね3人称で語られる。
街を擬人化する手法は「異国」などにも見られる。街が愛を呼ぶ、というのは何度聴いてもよくわからない。


ドラマチックに始まる。こちらはヴォーカルも力強い。サビでのハーモニーがいい。





4.萩野原

まどろむような歌。まさに浅い眠りの中で見る夢みたいだ。

幼い日の記憶。
昔もらった一輪の花、少年。

野暮だろうけど、「野原に行ったことがない」と「なつかしい野原」の整合性が気になる。いつか帰ってゆくって?

目を覚ますと知らぬ人の腕の中にいる。これが一番気になる。




▽歌詞カードのこのあたりに絵がある。
ウサギとサルとカエルがいる。よく見るとキツネや蝶もいる。
コミカルだ。なんとなく「予感」の部屋の壁紙を思い出した。

左側ではサルとウサギが踊っていて盛り上がってる。
中央ではサルとウサギが泳いでる。
カエルが花を持って相談している。

右ではカエルが葉っぱの傘をさしているが、雨は葉っぱにだけ降っている。雨が降ったから傘をさすのではない。傘をさすから雨が降るのだ。





5.誕生

何かの映画の歌だそうだけど、それだけではこんなに人気曲にはならない。


人生は流れてゆき、つまずいたり、無駄なんじゃないかと思ったり、別れがあったりする。
しかし思い出してほしい。自分が生まれた時はみんな祝福してくれたはずだ。それが思い出せないなら私があなたにそれを言う。


素晴らしい。傑作だ。以前聴いた時より胸にせまるものがある。こういう歌は一生の宝だ。




6.此処じゃない何処かへ

この歌の歌詞が何かのテストの問題文になったとラジオで聴いた。

これは「誕生」とは逆の、人生を振り返らず遠くまで来た状態だ。

若い。そして反抗的だ。
まわりの環境には適応できない。自分がいやになる。音楽に真実を見つけ、衝動のまま街を離れる。
「裸爪のライオン」「夜を往け」みたいな方向性だ。
反社会的な不良にならず、自分を責めたり遠くへ行きたがるのがかわいい。

一行目はよくわかる。オレもラジカセから音楽を吸収した。もう今は使ってないけど、今でもそばにラジカセはある。





7.妹じゃあるまいし

以前「あ・り・が・と・う」について書いた時に「勝手にしやがれ」との類似性を書いた。別に何と似ていようが関係ないんだが、気がついてしまうし、気がつくと書きたくなる。


最初の下降する音型が、甘える妹みたいだ。
「浅い眠り」でも気になったけど、この作品でも声を裏返しながら歌っている。西城秀樹のモノマネをする人が強調するアレですよ。




8.二隻の舟

夜会のテーマ曲として有名だが、オレは夜会を知らない。「2分の2」「問う女」の小説を呼んだだけだ。避けていたけど、食わず嫌いもどうかと思うし、機会があれば映像も見てみたい。



だいぶ変則的な構成になっている歌。

人生を海に例えている。
過酷なことがあっても二人は見えない絆で固く結ばれている。

最後のピアノはリズムを変えずに音階だけが変化してゆくのが面白い。




9.糸

結婚式のために作ったと聞いたことがある。
後にドラマに使われた。
ミスチルがカバーしたんだっけ。
オレの地元の銀行がこの歌をテーマ曲にしている。だからよく聴く。


珍しく…というのもアレだが、二人が幸せになる歌だ。ほんの少しアジアの風味を感じる。

幸せが「仕合わせ」なのが気になる。携帯では変換できない。





▽おわりに

前作に比べたら曲数は減ったし収録時間も減ったが、密度は濃い。

安心して人に薦められるアルバム。誰かに「中島みゆきを聴きたいから何かアルバム貸して」みたいになったら候補になりうるアルバム。


▼気まぐれ企画・初心者に薦める中島みゆきのアルバム

◎ 大吟醸、あるいはsinglesのどれか

○ EAST ASIA、あるいは自分の好きなアルバム

△ 短篇集、あるいはその時点で一番新しいアルバム

× 生きていてもいいですか


ってところでどうでしょう。2006年以降のアルバムは聴いてないから、聴いたら変わるかも?

 




中島みゆきを聴き直す
★1「私の声が聞こえますか」
★2「みんな去ってしまった」
★3「あ・り・が・と・う」
★4「愛していると云ってくれ」
★5「親愛なる者へ」
★6「singles」(3枚組・3枚目)
★7「おかえりなさい」
★8「生きていてもいいですか」
★9「臨月」
★10「寒水魚」
★11「予感」
★12「singles」(3枚組・2枚目)
★13「はじめまして」
★14「御色なおし」
★15「miss M.」
★16「36.5℃」
★17「singles」(3枚組・1枚目)
★18「歌暦」
★19「中島みゆき」
★20「グッバイガール」
★21「回帰熱」
★22「夜を往け」
★23「singlesII」(2枚組・2枚目)
★24「歌でしか言えない」


 
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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