笑ゥせぇるすまん/藤子不二雄A 「プラットホームの女」あらすじと感想


笑ゥせぇるすまん/藤子不二雄A 「マンガニア」あらすじと感想
の姉妹記事。中央公論社のコミック・スーリの「笑ゥせぇるすまん プラットホームの女」のあらすじをまとめ、軽く感想を書く。


「マンガニア」と同じ時に買った。「マンガニア」は新編集オリジナル原作コミック第3弾で、こちらは第2弾。さかのぼって読んでることになる。


「プラットホームの女」には11の作品が収録されている。最初の5話は吹き出しが角張っている。吹き出しが角張っている物語は喪黒が客を一方的に不幸にする不条理な展開が多い、と「マンガニア」の感想で書いた。



では見ていこう。


登場人物紹介。
いつも同じ笑顔の喪黒福造、いつも眠そうなバーのマスター。
それとは対照的に喜怒哀楽の表情が豊かなお客様たち。



▼「ともだち屋」
巻頭の喪黒福造のイラストが角張っていて、少し雰囲気が違う。

このお客様「青井達夫」はうだつのあがらない男を絵に描いたような風貌だ。
7ページの下の方、人の顔がみんな無表情だ。「ぷっちょ」みたいな顔だ。


会社で遊び仲間に入れてもらえない青井達夫が家でさみしくしてると喪黒が来る。この喪黒福造はガタイがいい。なんか違うと思ったら、この喪黒には頬骨が見える。

喪黒は女性の友達「白木純子さん」を青井達夫に紹介する。紹介の仕方が奇妙だ。まず写真だけ見せ、声が録音されたカセットテープを取り出す。声が一定間隔で録音されているから、これで会話してみろという。それでデレデレする青井も奇妙だ。

次に喪黒は青井と純子さんの2ショットの合成写真を見せたり手紙を書かせる。

白木純子から手紙が届く。夜公園で待ってるという。青井が張り切って行ってみると、白木純子は人形だった。触ると「誰か助けてー!」と悲鳴がする。たちまち青井は痴漢で捕まる。テープレコーダーを持った喪黒が「これがわたしの趣味なのです」と言って終了。

▽「ドーン」も約束もない。喪黒が大柄だし、だいぶ初期の話なんだろう。



▼プラットホームの女

直木純一には、同じ列車に乗る憧れの女性がいる。
そこに喪黒が乗り合わせていた。仲を取り持ってあげようと言う。この喪黒はさっきの「ともだち屋」の喪黒より小柄だ。直木はさっきの青井達夫よりも度胸がある。一度は喪黒の誘いをきっぱり断る。が、迷いもある。
喪黒は何度も突然あらわれる。喪黒は相手の女性の個人情報を調べて教え、「彼女は直木純一を気にしている」という。
喪黒は「彼女は幸せな身の上ではない、好奇心や興味で会わないでほしい」と忠告する。

アパートにやってきたその女性は言葉がたどたどしくカタカナで、一言ごとに「ヒュー」と音がする。彼女の顔は整形手術で作ったものだという。彼女が自分の顔を叩くとヒビわれて、本物の顔が姿をあらわす。直木は悲鳴をあげる。
喪黒「あれくらいの欠点は愛情でおぎなえるでしょう」


▽一番大事な、女性が本物の顔を出すコマに修正が入っていた。(画像参照)この本の前の持ち主が修正ペンで修正したのだろう。こういうのは困るが、安く買ったのだからしょうがない。光に透かすとなんとか見える。


この本には恋愛話が多い。「マンガニア」では車やゴルフの話が多かった。

相手をよく知らないのに急に親しくなろうとするとこういうことが起きる。



▼手切れ屋

タレントの坊田進一は、結婚をせまるホステスの千子と別れたがっている。そこに喪黒があらわれる。千子に話をして別れさせてくれるという。

喪黒はバーを飛び出す。
待ってる間、坊田はマスターと二人きりになる。マスターに喪黒のことを訪ねるとマスターは棚を指さす。そこには見ざる言わざる聞かざるの3体の猿の置物があった。

帰ってきた喪黒は、千子が進一の将来を考えて手を切ってくれたという。次に千子に会ったら二度と離れられなくなる、と喪黒は忠告する。

自分の将来のため手を切ってくれた、と思うと愛しくなり、坊田は千子に会いにいく。千子は喪黒に会ってないと言う。千子とよりを戻す進一。
そこへ喪黒が現れ「ドーン」
二人は裸のままくっついて離れられなくなる。喪黒は無言で去る。


▽喪黒が最後にしゃべらないのが珍しい。これは情に流された坊田が悪いな。



▼白昼夢

中島とその同僚は会社のビルの地下にある、昼間しかやってないクラブへと行く。そこは同僚が喪黒から教えられた場所だった。会社の昼休みにクラブで女の子に囲まれて酒を飲む楽しさに二人はハマる。

中島が2回目の昼休みに来た時に喪黒は「ドーン」をやる。時間を忘れてジャンジャンやろうと煽る。
勘定になり98000円と知り悲鳴をあげる中島。おごると言ってしまった中島は5000円だけ出して残りはツケにする。
会社に戻ると5時を過ぎていて二人は上司に怒られる。


▽酒に飲まれ、女に飲まれる。痛い目を見て当然だ。喪黒に会ってこの程度で済めばいい方だ。



▼47階からの眺め

退屈しのぎに47階の展望室から望遠鏡を眺める憂木守。二十歳だから、喪黒の客としては若い。

望遠鏡を見ていたら下のマンションの女の子が気になり始めた憂木守。喪黒が仕掛けをして彼女を見やすい場所へ呼ぶ。彼女はあなたに興味を持っている、会いに行ったらどうか、と煽る。ドーン。
憂木守は彼女に会いにいく。喪黒が社長に電話すると社長がマンションに入って、憂木守は顔面をボコボコにされてマンションから出てきた。
「下界をながめて満足してればよかったのに…ホーッホッホッホッホッ」

▽これも親しくないのに大胆なことをして失敗する男の話。常識的に考えれば引っかからないだろうが、ドーンのせいで男達は失敗する。



▼途中下車

規則正しい生活をする半出押作。判で押したような同じ日々を送る。
通勤電車で気になる店の女性がいる。それを喪黒に見抜かれる。毎度のパターンだが、喪黒はあの女性はあなたに会いたがっている、と煽る。ドーンで途中下車する半出押作。

しかし別の店に入ってしまう。せっかく入ったんだから一杯だけ、と飲む。気がつくと寝ていて88000円請求される。
さらに例の女性を探して店に入る。さっき帰ったと聞きタクシーで帰る。すると家がなくなっている。


▽かわいそうな話。女性に会えず88000円請求されただけでもひどいのに、家までなくなっている。

憧れる→煽られる→ドーン→大胆な行動→失敗、というパターンができている。



▼単身赴任

単身赴任の地方営業所の所長、丹見一人。職場で人気がなく寂しい。喪黒が「よりどころ」という飲み屋を紹介する。そこでは露子という感じのいい女性がいて楽しく過ごせる。丹見はよりどころへ通うようになる。

喪黒が露子に告白しろと煽ってドーン。丹見と露子はいい仲になる。そこへ奥さんがあらわれる。


▽これは両想いになれるし、さっきの半出押作に比べればマシに見える。なんだかコミカルな感じすらする。



◆MOGUROCLUB
声優の大平透さんの文章が載っている。「『笑ゥせぇるすまん』は福の神??」というタイトル。

大平透さんはアニメで喪黒福造の声をやった人だ。ハクション大魔王の声もやっていた。そうか、同じ人だったか。


文章の内容は、大平透さんの人生の略歴だ。さまざまな声の仕事を経て、60歳で定年を宣告された。そこにきたのが笑ゥせぇるすまんの仕事だった。藤子不二雄A先生は一発でOKをくれたとか。なかば自慢話にも読める文章だ。大平透がすごいのはわかった。



▼温泉奇行

温泉に来ていた木原志佐雄。喪黒に誘われ「幻怪亭」という宿に行く。二人で温泉に入る。

素敵な舞妓さんを相手に調子に乗って飲みまくり意識を失う。
起きたらカミさんそっくりの舞妓さんから花代十万請求される。


▽この男は飲むとすぐ意識を失う。一晩飲み明かすなんて考えるのがおかしい。宿の名前が「幻怪亭」の時点で気付けよ、って話だ。
それでも朝になると別の女になってる、というのは怖いな。



▼レンタル彼女

「シルバーバンク」の女の子バージョンみたいな話。女の子を連れていく必要があるのに出雲には女ともだちがいない。

出雲は家で「彼女がいないキミに!今夜わたしとデートね!」というバーチャルデートのビデオを見て泣いてる。みじめすぎる。

喪黒が彼女を一度だけレンタルしてくれる。好きになってもどうにもならない、一度しか会えない、という喪黒の忠告を守れない出雲。もう一度彼女に会いたいと喪黒にねだり「どうなっても知りません」と言われる。

もう一度会いに来た彼女には、暴力団ふうの男がマネージャーとしてついてきていた。

▽この後どうなるんだろう。ボコボコにされるくらいですめばいいけど。

本当に女がらみの話ばかりが続く。酒や女に対し自分をコントロールできない者がみんなブザマな最後になる。



▼長期休暇

長期休暇を持て余すサラリーマン長井安実(ながい・やすみ)に喪黒が近づく。そしてボランティアに連れていく。そこにはきれいな女性がいた。それからはボランティアに通うのが楽しくなる。

ボランティアの相手に個人的な感情を持ってはいけないと喪黒は忠告する。
長井は女性に個人的感情を持っている。奥さんに嘘をつき、喪黒に嘘をつく。

ある日ボランティアに行くと、そこにはいたのは自分に似たヨボヨボの老人だった。


▽この男も美人に引っかかり痛い目をみる。自分に嘘をつき続けたのも悪い。コマの隅っこに尿瓶が見える。介護の相手が未来の自分、というのはよくできているな。



▼夢に追われる男

ライオンに追われる夢ばかり見て困ってるシナリオライターの夢見。喪黒が「遊夢糖」というキャンディをプレゼントする。一晩に一粒、と約束させる。

遊夢糖を飲むと、夢にセーラー服の少女が登場するようになる。いいところで夢が切れ、続きを見るため遊夢糖を複数飲んでしまう。ドーン。
現実に少女が現れ、夢見を刺す。

▽約束を破ったとはいえ、夢の中での一回のキスの代償が死とは、過酷だ。




ついに全てが女性がらみの話だった。一時の感情が男達を破滅させていく。喪黒が煽って不幸になるパターンもあるが、煽られなくても男は約束を破って勝手に不幸になる。
ふとしたはずみで自分を見失って転落する、人間のもろさ、男のもろさをあざけり笑うブラックユーモアなのか。自分が喪黒の立場だったら笑いが止まらないだろうなあ、とは思う。




スポンサーサイト
プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

最新記事
リンク
月別アーカイブ
フリーエリア
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR