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新人賞歌人に高卒はいない

オレは高卒なんだが、歌人が大卒ばかりであることに気づいた。

新人賞を受賞した歌人で高卒はいないのか調べたが、ひとりも見つからなかった。

あたらしいほうから調べた。主に2000年までさかのぼった。

▽短歌研究新人賞だと2002年の受賞者は学歴がわからない。それ以外の受賞者は大学進学者であると確認した。大学中退が一人いた。

▽角川短歌賞だと2005年の人の学歴がわからないが、教師をしてるから大学行ってるだろう。2002年の人もわからない。大きな結社の選者をしている。それ以外の受賞者は大学進学者であると確認した。

▽歌壇賞は調べても出身校が出てこない歌人が多い。最新の人ですらわからない。




逆に、高卒の歌人をネットで検索して出てきたのは、稲葉京子、正岡豊、蝦名泰洋。



正岡さんが高卒なのが疑わしいので調べた。
証拠を得た。



2018年3月23日の正岡さんのツイート。
https://t.co/YoSgiP7oLH

“愛妻のサキが花粉症と風邪のダブルパンチで寝てるので、今日は静かに本読み日。「現代短歌」3月号、山田航の文章、

「特に学歴の分断は顕著で、日本では大卒と非大卒とで全く違う国に暮らしてるといっていいくらいコミュニティが分かれてしまってる。」

はリアル。私も高卒なんでよくわかるわこれ。 https://t.co/SDwvzRKczm






「高卒 短歌」「高卒 歌人」で検索して、高卒歌人を探したけど、有名なひとはあまりいない。それを調べるオレのコンプレックスよ。

一番調べやすいのは、ツイッターをやっている歌人であれば、「ツイッターID+大学」でツイート検索する方法だ。「大学」ででなければ「高卒」「高校」「学歴」などとずらしていけばよい。


「全く違う国に暮らしてる」か。そこまでは考えてなかった。

分断ということで言えば、オレは大卒と非大卒なら非大卒だし、中央と地方なら地方だ。
でも、そんなにスッパリ二つに割れるものじゃないと思うよ。オレのいる所は地方のなかでは人口が多い場所で、本とか手に入りやすいし、便利に暮らしているつもりだ。「つもり」以上のものではないが。







アンソロジー本も調べた。

山田航編著『桜前線開架宣言』で収録歌人の経歴を見たんだけど、数人が出身校を書いていない以外はみんな大学に行っている。笹井宏之さんは病気で高校中退とあったが。
この本に書いてあるんだけど、野口あや子さんがヤンキー寄りってほんとなの? ヤンキーと拒食症って近いの? 大学を出た人がヤンキーなわけないと思った。お会いしたときにもそういう印象は受けなかった。



千葉聡・佐藤弓生・東直子編著『短歌タイムカプセル』もおなじだ。



もしかして、オレが知らないだけで、高卒以下は学歴を書かないマナーがあったりするのか??

っていうか最終学歴を書くのってそもそもなんのためなんだ。そこで「程度」を見られているのか。出身県や職業が書かれていない場合でも、学歴は書いてあることが多いわけで、それだけ大事だってことなんでしょう。
プロフィールっていうのは、生年も出身地も受賞歴も、どれもみんな「階級」を提示させられているのか、とたったいま思った。



アンソロジー本のなかで、岡野大嗣さん木下龍也さん伊舎堂仁さんはプロフィールに学歴を書いていない。
「歌壇」にちかい人ほどプロフィールに出身校を書くような気がする。「壇」とは上と下があるもので、階級と相性がいいということか。そしてオレは、下のほうにいるわりには階級に興味あるかも。

さっき書いたやり方でツイート検索してみた結果、この三人のうち一人は大学時代のことをツイートしていた。
ほかの二人は大学時代のことを一切ツイートしていない。高校時代のことはツイートしている。







大学や短期大学への進学率の推移は?男女や現役、浪人での数字はどうなっている?
https://education-career.jp/magazine/data-report/2019/education-

大学に進学する人は日本人の6割以下なのに、有名な歌人はほとんどが大学に進学している。やっぱ短歌って頭をつかうし知識も要るってことなんですかね。

オレは今だって、短歌というのは57577ぐらいの文字数でなんか書くものだと思ってる。そこに学問とかあんまり関係ないだろと思ってる。

でもたしかに、頭のいい人のほうがおもしろいあたらしいことを考えつくことは多いと思うよ。
最近、東大のクイズ王の「クイズノック」の動画をよく見るんだけど、創造性があって楽しいよ。「知」が遊びを豊かにするんだと感じる今日このごろだ。
それはオレの最近の趣味の話なので、脱線だ。







新人賞の受賞歌人に限ると、オレしか高卒がいない可能性がある。それなのに受賞したと思えば、オレは非常に珍しい歌人だ。
珍しいけど、それが歌壇のなかでどう活きるのかというと、なかなか難しいでしょうね。
例えば、自分だけ羽根が生えてて空が飛べるとか、珍しい職業の経験があるとかならそれを活かすこともできそうだが、学歴がないことなんかなんのメリットもないよ。



歌人とやりとりしていて、向こうはこちらの言うことがわかるようだけど、こちらは向こうの言ってることがわからないって場面はけっこうある。そうなったらやりとりを長引かせないようにしている。「もっと勉強します」みたいなことを書くなり言うなりして終わらせるようにしている。

ツイッター見てて、この人たちとオレは全然感覚がちがうんじゃないかと感じることは多い。そう感じさせるカタカナ語がいくつかある。「アポリア」とか。カタカナ語以外だと「構造」とか「再生産」が出てくる話は大体わからない。中身がわかんないから、怒ってるなーとか見下してるのかなーとか、雰囲気だけをつかむことになる。
意味がわかるかわからないかの問題もあるし、そういう言葉を知ってても使うかどうか、オレにそれを理解する気があるかどうかの問題でもある。政治や差別への関心のもちかたが、オレのまわりの人たちと違いすぎる。

画面の中と外のギャップにも、もう慣れてきたけども。ネットにはいろんな人がいるよね、って感じで。



大学関係のニュースに関心がない。不正入試のニュースとか聞いても全く心に響いてこない。駅伝まったく見ない。

すずちうさんにこういう短歌がある。
箱根駅伝が始まると無言でチャンネルを変える高卒の父
https://twitter.com/suzuchiu/status/19968841215909888?s=19
オレはこの「父」と同じだ。


オレの家族にも大学を出た人はいないんですよ。歌人のなかにいると、仲間外れで自分だけ劣ってるって感じはすこしある。

たぶん鳥居さんはもっとあるんだろうと想像してみるが、やっぱりオレの想像の範囲外であると思い直した。制服をずっと着てるとかになると、オレの感覚ではもう全然わからない。
学歴のない歌人というのは珍しかったんだが、その枠は鳥居さんが一気に埋めた感がある。







オレの頭がたりないのはしょうがないけど、それを見せつけるのはしのびないから、長い文章、とくに評論の依頼は断っている。オレは論文を書いたことがない。日記や歌集評や短いエッセイの場合は受ける。

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永田紅『春の顕微鏡』  ~しゃるしゃるとペダルを、ほか

歌集読む 208

永田紅『春の顕微鏡』。
青磁社。2018年9月。第四歌集。



論文に説明されたる症状の痛ましとコーヒーを淹れに立ちたり
/永田紅『春の顕微鏡』



当たり障りなき発言に失望さるるを怖れつつ空調の音を聞きおり
/永田紅『春の顕微鏡』

→「空調の音を聞きおり」。発言しているのか、発言した直後なのか。誰もなにも音をたてず声も出していない。空調の音にしずけさがあらわれている。



アメリカのスペースシャトルの墜ちし日に教室で女性教師は泣きぬ
/永田紅『春の顕微鏡』

→ここだけ引いてもわかりにくいな。「十歳のころ」という、アメリカでの生活の一連。星条旗や愛国心の歌があり、この歌がある。
「泣きぬ」って普通にあるけど、日本の教師は泣かない気がする。



横顔に親しみてただ見ていしがふいに振り向き時間を問えり
/永田紅『春の顕微鏡』



学振(がくしん)が苦心、科研費書けん日、と言葉に遊ぶを息抜きとして
/永田紅『春の顕微鏡』

→『塔』の編集後記で、こういう遊びで盛り上がったって書いてある号があったよね。二つあるがどちらも略語から始まる。
言葉遊びの裏になにやら張りつめたものがある。



まだ居たきこの家なれば花の種かさかさ振って庭を歩くよ
/永田紅『春の顕微鏡』

しゃるしゃるとペダルを逆に漕ぐときの力の抜き様(よう) 歳を重ねて
/永田紅『春の顕微鏡』

→「かさかさ」の歌と「しゃるしゃる」の歌を引いた。
自転車のペダルを逆に漕ぐとたしかにやたら軽い。力の抜き様というなら、かなり力が抜けている。「しゃるしゃる」がうまい。



書いたものぜんぶ消すとき破らぬよう別の力も必要だった
/永田紅『春の顕微鏡』





丸つけた歌はそんな感じ。

2006年から2011年までの作品を収めたということで、「母」の死の歌がある。家族とか植物とか研究とか、そういうことが主なテーマなんだろうけど、そこに興味が持てなくて想像することも難しい。

この本おわり。
んじゃまた。

髙橋みずほ『白い田』  ~しとしと 雨 しとしと 雨、ほか

歌集読む 207
髙橋みずほ『白い田』。
六花書林。2018年2月。




本のなかには作者の情報があまりないんだけど、Wikipediaにくわしい。「夫は歌人の吉野裕之」とあった。仙台生まれの方なんですね。歌集がたくさん出ている。

パラフィン紙っていうんですかね。カサカサしてて白く曇った紙が歌集をカバーしている。オレはこういうのは取りたくなっちゃうんだけど、接着されていた。



子守唄やさしきおとのつらなりにねむる赤子らふたつ耳たぶ
/髙橋みずほ『白い田』



屋根を打つ音のしばらく雨の粒に消えゆくおもいでのある
/髙橋みずほ『白い田』

→57577とは異なる短歌が多く見られる。この歌の場合は「雨の」が三句と読める。この前か後かに空白ができる。前かな。



天井に影のびていて見守っているようなり 淡さ
/髙橋みずほ『白い田』



しとしと 雨 しとしと 雨 ひとつ雷ありてひと日のおわり
/髙橋みずほ『白い田』

→なんとぽっかりした歌だろう。天気とのその音だけだ。生き物の気配がまったくない。
「しと」か「ひと」が間隔を置いてずっと出てくる。ひらがなと漢字も間隔をおきながら繰り返される。



にくしみがふつふつとあることをつかれてしぼむ紙の風船
/髙橋みずほ『白い田』

→ぽんぽんとはじかれている紙風船だが、ついたらまずいところを突かれてしまったようだ。図星をつかれた人の心のようでもある。人の心はもろいということか。
結句ではじめて漢字が出てきて、これがしわくちゃの紙みたいだ。



ひと粒をつまんで子供口にする信じるものを舌にてさぐる
/髙橋みずほ『白い田』

→子供が知らないものをはじめて食べている様子か。「信じるものを」がいい。うまいのか不味いのか中に種があるのか。食べ物のこととは限らないようにも見えた。



吐く息のゆきさきわからずおしだされくらりねっと
/髙橋みずほ『白い田』

→「ゆきさきわからず」は息の視点。楽器の歌だが、音ではなく息のことだけ言っている。
短歌としてはだいぶ短いようだが、結句にクラリネットの音があると想像してみたくなる。



ふとふいになんともならなくなりてしずくのかずをかぞえておれば
/髙橋みずほ『白い田』

→しばしば三句が欠けるんですね。まるごと欠けることもあれば、三文字だったりする。はじめはとまどうが、歌集の後半になるとだんだん読んでてノッてくる。
ふ→ふ、な→な→な→な、しず→かず→かぞ。こうしたところも「ノッてくる」につながっているかも。



しずかにうたをうたおう木の葉の下でなにかが変わってしまうから
/髙橋みずほ『白い田』



もういいかいもういいかい返事なく空のかぎりへ声かける鬼の子
/髙橋みずほ『白い田』

というような歌を単独で引いてもしょうがないといえばしょうがないのかもしれない。歌集の終盤では父の死後の空白が詠まれる。



屋根雪おちて今ふとおもう音なり
/髙橋みずほ『白い田』

最後の歌を引いた。
一ページ三首だったものが二首になり、一首になる。どこか欠けがちだった一首の歌が、さらに短くなってゆく。それがまるで死者を雪がしずかに覆ってゆくようで、感銘を受けた。

あらためて表紙のパラフィン紙を思うわけです。歌集自体を雪が覆っているようだと。短くて画数も少ないタイトルも効いている。




この本おわり。




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『短歌研究』2019年5月号  ~花に溺れて、ほか

総合誌読む 135


短歌研究 2019年5月号



表紙からしてなかなか古典の色が濃い内容なんですが、そうでもないと古典について触れる機会がかなり少ないので、勉強と思って読みました。




水泳の苦手なわれは夢のなか花に溺れてワッと目覚ます
/栗木京子「鈴振るやうに」

→夢の歌ってけっこう好きでわりと丸をつけます。
水泳の得意不得意が夢のなかにまで影響している。花のなかでも水泳のスキルがものをいうようだ。得意だったら目覚めることなく泳いでいたろうか。



青空よミスを重ねし人間がAIに面罵さるる日来るや
/栗木京子「鈴振るやうに」



びっくりと言って頭上に栗の絵を思い浮かべている女子会で
/武田穂佳「エンジェル」

→「びっくり」と言ったってことは、びっくりしている自分を自分で把握できているので、ほんとに驚いてるのとはちょっと違うんだろうね。しかもそのことじゃなくて栗のこと思い浮かべてるし。この栗は実物じゃなくて絵なんだね。

ノートに丸をたくさん書いて怒られた中学校の晴れていた外
/武田穂佳「エンジェル」

→怒られたってことは教室で授業している。外が晴れていてたくさんの丸っていうと、シャボン玉みたい。
丸を書いてるし、外が晴れてるっていうし、この歌もその場からちょっと外れている歌だ。上の空な歌ふたつに丸をつけていた。



身をのべてまた身を折りて思ふなり棺よりややベッドは広し
/稲葉京子『紅を汲む』

手足なきものはつくづくさびしけれましてキャベツのまなこなき貌
/稲葉京子『紅を汲む』

「稲葉京子全歌集」を読む特集があった。60代から晩年の歌がおもしろく感じた。



眠りゐし黒猫が起(た)ちてゆきたればその下に繊(ほそ)くありたる亀裂
/真鍋美恵子『玻璃』



店頭のテレビのプロレス見る吾らクラクションにも道開けざりき
/小野雅敏『アルゴンキン』



ガラスへとぶつかったあと目を覚ましきっと何度も忘れるメジロ
/くろだたけし

→「うたう★クラブ」から。



丸をつけたのはそういう歌でした。

この5月号では歌集評を3ページぶん書きました。

この本おわり。
んじゃまた。



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川野里子『歓待』  ~混濁の母、ほか

歌集読む 206

川野里子『歓待』
砂子屋書房。2019年4月。第六歌集。

前回につづいて川野里子さんの歌集を見ていきます。
「現代三十六歌仙」というシリーズの一冊。このあいだ「令和三十六歌仙」というシリーズの歌集の一冊をとりあげたけど、そういう歌集のシリーズはいっぱいありすぎてよくわからない。



ひと匙を食べて目瞑りふた匙を呑みて苦しむ命見てをり
/川野里子『歓待』

宇宙から見れば今死ぬ吾の手が今死ぬ母の手を握りをり
/川野里子『歓待』

母の母その母の母あつまりてさやさやと愛づ老衰の母
/川野里子『歓待』

ここまで、冒頭の「Place to be」という連作から引いた。この一連は今年の短歌研究賞に選ばれていて、高く評価された連作といえる。
第五歌集の最後のところで徘徊している歌を引いたけど、その母が亡くなった一連。
ところどころに詞書がある。断片的な言葉だ。〈宇宙から~〉の歌には「もう帰ろう」、〈母の母~〉の歌には「また 会おうな」とある。母の言葉なのだろう。ぽつりぽつりとしている。



ヘラクレスオホカブト闇を動きをり大きな虫は大き怯えに
/川野里子『歓待』



「絆」とは何だったのか人間の繋がりをけふ「共謀」と呼ぶ
/川野里子『歓待』

→そういえば最近、社長が社員たちを「家族」と言ってる会見を見たな……と思っていたら、次に丸をつけたのはこんな歌だった。
笑ふことなきままお笑ひみてをりぬ松本人志あはく汚るる
/川野里子『歓待』





帰宅せし闇に微かに震へつつウヅラの卵を抱く冷蔵庫
/川野里子『歓待』

→こうしてみると冷蔵庫が親鳥みたいだ。暗かったり震えたりしていて、厳しい環境であるかのようだ。
さまざまな家電製品について詠んだこの連作のタイトルが「家電ツァ」。音楽用語のカデンツァにひっかけている。



一匹、二匹、三匹、家族はさぐりあひまたたきてをり停電の闇
/川野里子『歓待』



青空のひとところわづか震へをりプールの水面に蟻は溺るる
/川野里子『歓待』





知床の岬の歌かところどころ虫喰ふやうに老人歌ふ

「はまなすが咲く頃」「はまなすが咲く頃」そこから先のあらぬ知床

酸素マスクの中に歌われ知床の岬は深き霧の中なり
/川野里子『歓待』





スリッパ、窓、便器、吸ひ飲み もろともに漂流してをり混濁の母と
/川野里子『歓待』

最後にまた母の歌を引く。歌集の冒頭の一連で母の死が歌われるが、末尾のほうに生きている母の歌がある。
病室の物が四つ並んでいるが、順序や選択にまとまりがなく、これが混濁を表現しているものと見た。どこへ辿り着く漂流なのか、すでに読者は知っている。

最後の状況が繰り返し出てきて、つらいものがありました。
この本おわり。



んじゃまた。

川野里子『硝子の島』  ~ゴワッと黒き空をひらきぬ、ほか

歌集読む 205



川野里子『硝子の島』
短歌研究社。2017年11月。第五歌集

帯の文字の一部がでかいが、どういう基準ででかくしたのか。



高層マンション怖ろしければ見上げをり詰問のごとき高さとおもふ
/川野里子『硝子の島』


マスク外さぬ若者をりてそこのみが虫食ひ問題のままなる白さ
/川野里子『硝子の島』


あさがほの仕事は花をひらくこと出勤するがにつぎつぎ咲(ひら)く
/川野里子『硝子の島』

→しばしば出てくる比喩がおもしろい。「ごと」とか「がに」ですね。

テーマの強くでた連作がつづく。たとえば最初の「おほきな花」という一連では、13首のうち6首に「スマトラオホコンニャク」が出てきて10首に「花」の字がある。これが好きなら楽しいだろう。



がんばらうにつぽん がんばらうにつぽん 木霊かへさぬ森しんとある
/川野里子『硝子の島』



蝙蝠傘(かうもり)はさすとき恐ろしき音したりゴワッと黒き空はひらきぬ
/川野里子『硝子の島』

→傘をさすときの音の「ゴワッ」がいい。これを怖いと思ったことはないが、言われてみると怖いような気もしてくる。
これを受けてその次に落下傘部隊の歌があるからそれも引いてみよう。

落下傘部隊のやうに素早く傘たたみ地下鉄にあまた人潜りゆく
/川野里子『硝子の島』

→雨の日の通学通勤の人々の様子が、まるで戦争だ。さっきの「恐ろしき音」や「黒き空」にも戦争がからみついてくる。



夜のトイレしばしの孤独にみつめゐき「混ぜるな危険」と書かれしボトル
/川野里子『硝子の島』



さうめん流しひゃーとさうめん流れゆきわれとわが母取り残されぬ
/川野里子『硝子の島』

→さっきの「ゴワッ」もよかったけどこの「ひゃー」もいい。涼しげで、速さがあって、そうめん自身が叫んでいるようでもある。
老いた母についての一連。



まはつてまはつてまはつてまはつて徘徊は花吹雪のやう老人歩く
/川野里子『硝子の島』

→最後も比喩の歌を引いた。くるくる回る花びらと、徘徊する老人が重ねられる。行こうとしてもたどりつかない歩み。少し美しいがだいぶ悲しい。



連作がつよいと書いたけど、知らないものや興味ないものがテーマになってるとその章がわからない歌、とばす歌だらけになる。それはまあオレの知識や経験の不足もあります。

この本おわり。
んじゃまた。

久々湊盈子『世界黄昏』  ~他人の記憶に入りゆくような、ほか

歌集読む 204

久々湊盈子『世界黄昏』。
砂子屋書房。2017年8月。第9歌集。

8/4の記事で『合歓』をやったので、その流れで今回は久々湊さんの歌集を見ていく。1ページ2首で300ページくらいある。厚い。
帯の文がむずかしい。三つくらいわからない言葉がある。

「黄昏」で「こうこん」と読む。オレのスマホで「こうこん」と打つと「合コン」 が出る。




誰も誰かのただひとりにて雨あとの空にいつもの夕星(ゆうつづ)が出る
/久々湊盈子『世界黄昏』



これの世に七人の敵あり身内にも潜む敵ありケーキ屋の前
/久々湊盈子『世界黄昏』

→ピリッとしたところから結句で落とした。甘いものを食べたい気持ちが敵だというんだね。ちょっとかわいいじゃないですか。

最近、吉本興業の関係でいろいろ動画を見たんだけど、千原ジュニアが、「笑いとは緊張と緩和だ」と言っていた。
それをこの歌に当てはめると「敵あり」の繰り返しが緊張を高めていて、「ケーキ屋」で緩和している。



絞めやすそうなほそきうなじをさしのべて昼の電車に居眠るおみな
/久々湊盈子『世界黄昏』



他人(ひと)の記憶に入りゆくような夕まぐれ路地に醤油の焦げるにおいす
/久々湊盈子『世界黄昏』

→よその家からくる料理の匂いって、想像力を刺激してくる。どんな料理でどんな家庭なのか。
「他人の記憶に入りゆくような」がおもしろい。空は暗くなってきて、入り組んで視界が狭くなっていて、自分と他人の境界も曖昧になる。
路地だから狭いとは限らないのかもと思ってGoogleで画像検索したら、いい感じの画像が並んでいた https://t.co/ecNMtpJnu3



電動ハブラシ考案せしはいずこなるずぼら男か 日々愛用す
/久々湊盈子『世界黄昏』



「もっときたなく死んでください」エキストラの友が三回斬られし映画
/久々湊盈子『世界黄昏』



右折せよ右折せよと指図してこのごろ日本のナビはうるさい
/久々湊盈子『世界黄昏』

→政治とか、これからの世界への不安の歌がけっこうあるんだけど、このへんまで降りてきてくれればオレにもなんとか読めるかなーってところだ。時事川柳みたいだけども。



紀香のグラビアいちばん上に縛り上げ廃品回収の車待つなり
/久々湊盈子『世界黄昏』

→すこしエロスを漂わせて、それから「廃品回収」の生活感へ落としてきた。


丸つけた歌は以上です。滑稽味のある歌を多く引いたなあ。政治の歌も多いけど、ゆったりしたところのある歌集だと思う。そこがオレにはプラスだった。
この本おわり。




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▼ブログ10周年企画(予定)▼伏せ字検索  2019年7月

7月の断片的な文章をいくつかここにまとめる。




▼ブログ10周年企画

10月にブログが10周年になる。
10周年企画でいま考えているのは「誌上歌集」ならぬ「ブログ上歌集」みたいなこと。

ひとつの記事でひとつの章というか連作にする。ひとつの連作が10-50首。それが全部で10章くらいになるんで、10記事くらいにわたって合計300首くらいを出していく。
まあそれはあとでnoteやなんかにも同じものを出していくかもしれないんだけど。

オレはよく自作をまとめているんだけど、それにも関わらず、なんかまとまりが悪いなあと思ったんだよ。受賞作と受賞第一作だけは見つけやすくしてあるけど、その他はバラバラになっている。それを一ヶ所にまとめたいと思った。まとめるついでに少し直したい。

たとえば「新進気鋭の歌人たち」のときの10首連作を自分で探そうとして、なかなか見つけられなかった。そしたらなんと、ブログにアップされてなかった。
あと、2014年の「仙台に雪が降る」は有料公開にしてたけど5年経ったんだから無料でもいい。
そのへんの、自作の足並みをきっちり揃えようと思っている。


オレがもし急に死んだら、親切な人がその300首を遺歌集として出してくれたらいいなと思うが、まあ、なかなか死なないだろう。生きて自分で出版する機会があればいいし、なくてもネットでは読めるようにする。





▼おめでとうございます

短歌研究新人賞が決まった。おめでとうございます。
郡司和斗さんが祝福されてるけど、中野霞さんという人がまったく正体不明で、こちらが興味ある。
なんにも表に出るような活動をしないでそこまで登りつめるとは。知ってる人の別名だったらすこしつまらなくなる。

まだ新人気分が抜けないオレだ。うれしさが一年続いている。




▼高く評価した動画


"犬をヤらしくさわる男"
https://t.co/T5DYLsa98T
最低だと思いながら何回も見てしまう動画。



"ショパン エチュードop.10-4をヴァイオリンで弾いてみた"
https://youtu.be/Ql9qKdDKY-w

超絶技巧だ。




"Every Beethoven Symphony at the Same Time"
https://youtu.be/i08a8X3mcj4

すべてのベートーベンの交響曲を同時に鳴らした動画。変態だ。
はじめの30分くらいはごちゃごちゃしていて、35-48分は英雄と第九が重なっていて、48分から最後は第九だけになる。
混沌から歓喜に至る。
おもしろいけど頭が痛くなる。



"さよならポニーテール「空飛ぶ子熊、巡礼ス」Music Video"
https://t.co/SkKl4gKmxx

かなり好きな動画。
「さよならポニーテール」がなんなのかは知らないが、山田全自動さんの映像は大好き。
言葉と映像のズレ、なつかしい感じがたまらない。




▼ネット未発表の文章

オレが結社誌や雑誌で発表した文章で、ネットに公開されてないものがけっこうある。それをネットで見られるようにしようかと考えていたんだが、どうも古い自分の文章は下手くそで恥ずかしい。
こういうのはあまり時間をおかないでやったほうがいいのだろう。

いちおう思い出せるかぎり書き出してみると、

まず、「塔」
2013年ごろに歌集評をひとつ書いた。
2015年の1-6月号で選歌欄評を書いた。
「方舟」に二回書いた。
年末のアンケート的なやつに文章を寄せた。
歌集評はまあ、大丈夫と思う。
選歌欄評は全部は無理だなあ。やるとしたら抜粋になる。
「方舟」は誌面への応答だからネットに出す意味がまったくない。
アンケートのエッセイは何を書いたか覚えてない。

次に「未来」
歌集評がひとつあるけどあんまり良くない内容な気がする。このまま忘れ去られてもいい。
「その日その日」という欄にエッセイを書いたが、当たり障りない。

次に「かばん」
歌集評をひとつ書いた。これは自分の中では書けたほうに入る。出してもよい。

次に「うた新聞」
「ライムライト」という欄にエッセイを書いた。有料で公開中。書けたほうに入る。

最後に「短歌研究」
2014年に「新進気鋭の歌人たち」に短い文章を出した。ツイッターに画像であげた。ブログに置いてもよい。
歌集評3ヶ月ぶん。これも下手な文章だが、オレの実力なので仕方がない。歌集の宣伝になる可能性があるから出してもよい。

思い出した。短歌と俳句の文芸誌「We」で、俳句の評のページを二回担当した。これはよく知らない分野について書いた文章だからネットに出したりはしない。

紙の上の文字になったオレの文章は以上であります。
積極的に書きたいわけじゃなくて、回ってくれば受けるって感じ。書いてるときは楽しくても、あとで恥ずかしくなる。

あちこちの本に書き散らしたものを一ヶ所(ブログかnote)にまとめておいたら良かろうと考えてリストアップしてみたわけだが、罰ゲームのように思えてくる。
やるとしてもごく限定的なかたちになるだろう。



▼いろいろ

auウォレットポイントの運用をはじめて3ヶ月、はじめて1円ぶん利益が出た。
もっとたくさん投資しないとたいした利益にならないのかもしれないね。



小野ほりでいさんのnoteのマガジン「平気で生きるということ」1500円で買って、読みおわった。気づくことが多かった。わりとこれまでだって平気なつもりだったが、そうでもなかった。



生まれてはじめてウォシュレットつかった。くすぐったい。一首できた。



ファミリーマートの「バター香るしっとり厚切りバームクーヘン」が好き。好き嫌いが分かれそうな気がするけども




#みなさん小中高って修学旅行どこだったんですか
小→福島
中→東京
高→北海道

小学校の修学旅行で福島に行ったときに買った赤べこがまだ手元にある https://t.co/3u95fyHLrk

中学校の修学旅行のことはほとんど覚えてないけど短歌はひとつ作った。

人生のうすい汚点にディズニーではぐれて何も乗らなかった日/工藤吉生
〈2017.7 野性時代「野性歌壇」〉
加藤千恵さんの佳作。


高校の修学旅行は北海道の修道院に行ったりレンガの建物に行ったり、なんかいろいろした。中島みゆきファンだったから興奮したが、特にみゆきさんにゆかりのあるものは見かけなかった。
函館の夜景見てワーワーした。ラベンダーのソフトクリーム食べた。ってことは富良野に行ったんだろうな。




▼浜竹

相原かろさんの歌集『浜竹』から。 https://t.co/SCyZvtxb6a

ほとんどが工藤吉生だつぶやきの相原かろを検索したら
/相原かろ『浜竹』



今でもほとんどオレなのかなーと思って検索してみたら、今でもわりとそうだった。歌集が評判になって、工藤がうすくなるといいですね。

オレの名前を短歌に入れる人は今までに何人かいらっしゃったんですが、その短歌を歌集に収録した方は初めて。

かろさんはマジでおもしろい歌をつくる歌人さんなので、『塔』以外の方にも広く読まれるといいなあと思います。

今までに、短歌関係で総合誌や結社誌や新聞やネットプリントや、いろんなところにオレの作品や名前を載せていただいてきましたが、「歌集」にはオレの名前が載ったことがなかったんです。うれしいなあ。




▼伏せ字検索

「○田○子の秘密エッチ流出映像を限定公開中!」だそうだが、誰なんだ。森田童子? https://t.co/YpdOiSvXs6

「○田○子」で検索したら「伏せ字検索」というページがでてきた。
https://t.co/pIKFWPZzmm
〈○田○子はきっと「松田聖子」です〉と結果が出てきた。

松田聖子、桜田淳子、森田童子、向田邦子、寺田恵子、戸田恵子、石田燿子、熊田曜子、沢田聖子、深田恭子
と候補が一覧になっているけど、迷惑メール的には「前田敦子」が正解なんじゃないのかな。流出したら大ニュースになりそうな、比較的最近の芸能人ということで考えれば。





▼あした

今日は中島みゆきの「あした」の歌詞のことを考えていた。いまの自分に響いてくる歌。

前奏は甘い感じでふわふわ始まって、イヤリングを外すとかフリルのシャツを脱ぐとか言い出してまだ甘い雰囲気があるみたいだけど、これっていうのは装飾が剥がれて中身が露出していくってことだ。

カーラジオが嵐を告げるっていうのは予感ですね。予報。まだこの段階では嵐になっていない。黙りこんでいるっていって問いかけがあってサビ。サビは「もしも明日」ってことでこれも仮のことなんだけど、こんなに悪い予感をもっているのはなんだろうと。

二番になると、Aメロで二人の気持ちが近づこうとしてもわからなくなってしまうことを言い始める。一番のAメロでは脱いでたんで、その続きですかね。一歩踏み込んだ。「なおわからなくなるみたいだ」は一番の「見失ってしまわないでね」の、まさに見失ってしまったところだ。
つまり一番の悪い予感が二番で的中しはじめたんだな。

わからなくなって、それでどうなるのか不安がきざしてくるが、Bメロになるとせっぱつまってくる。「追い越してく」からの「一車線の人生」は一番のBメロの「カーラジオ」とつながって車に乗ってる感触を強めている。

ここで「土砂降りの一車線の人生」で土砂降りになる。これが一番のカーラジオで告げられていた嵐に相当すると考えれば、ここでも悪い予報が現実になっている。

「こごえながら」で、まるで二人が直接雨に濡れているみたいに感じる。車の中にいるはずなんだけど、嵐のまっただ中だ。
「二人ともが二人ぶん傷ついている」がすごく重い。

そういうことを言ってからまたサビがくる。同じ悪い予感にしても、一番のときよりずっとその悪い状況に近づいているようだし、「言えるならその時」の「その時」はすぐそこまできてるみたいだ。

なにがそんなに二人を追いつめているのか、それがよく見えないんだけど、オレは最近わかる気がしてきている。
こういう歌は中島みゆきのほかの歌にもそうそうないんだよ。フラれたから辛いとかそういうことじゃなくて、二人は愛し合っているままで何かひどいことになっている。

変なことを言うけど、愛っていうのは美しい楽しいことばっかりじゃないんだよな。熱心に聞いてた学生の頃にそれがわからなかった。

「ただの心しかもたない痩せた猫」とか「なんの得もなくても」とか、「愛」以外のぜんぶを失うみたいに言っている。ふわふわして始まって、緊迫してくる。

結末を考えずに書き始めたけど、どうすりゃいいのかわかんなくなったので終わる。

『合歓』84号  ~四捨五入してわたしを拾う、ほか

結社誌読む 152



『合歓』84号。2019年4月。




けっこう何度も取り上げている本なんだけど、馴染みのない方がほとんどだと思って説明します。
『合歓』は久々湊盈子さんを代表とする合歓の会が出している本。季刊。90ページ。久々湊さんによるインタビューがあるのが特徴か。



雨やみし路地裏ゆけば器なすものみな水をたたへてゐたり
/志垣澄幸



われにしか愚痴れぬ娘なれば詮なしと蜜柑の筋を丁寧にとる
/小田亜起子「声なき声を」

→娘の愚痴を聞いているのだろう。みかんを丁寧に食べるように、娘にも丁寧に接しているということか。そういうものだということで淡々としているように感じた。



B型のわれは立ち居を慎まむゴリラに多き血液型ゆえ
/関井宮子「墓終い」





暗きなか唇ほどのわづかなるあかり消えたり闇ふくらめり
/伊藤一彦『光の庭』

刺し違ふるごとく間近を走りあふ電車のはらわたの中にゐる
/伊藤一彦『光の庭』

歌集評のページから。一首目。灯りを「唇ほど」と見立てるのが非凡だ。ピンク色だったりしたのだろうか。ふくらんだ闇に、唇の感触がまだ残っているように感じられた。
ニ首目は電車のすれ違いに時代劇みたいな、別の種類の迫力が上乗せされた。



出しきれず残る力の重たさにうなだれてをり敗けし少年
/福士りか『サント・ネージュ』



雑踏で全身音にまみれしが四捨五入してわたしを拾う
/桑名知華子

→斉藤斎藤さんみたいな下の句だと思った。
雑踏のさまざまな音や言葉をすべて受け止めることはできない。切り捨てて切り捨てて自分を保つのだ。
これは前号評で見た歌。今回はどんな歌を出してるのかと思って名前を探したが、いなかった。

この本おわり。

何度も取り上げているけど、それだけ好きな本なのかというと別にそういうわけじゃない。いまのところ、届いたものはだいたい読めていて、読んだものにはだいたい感想を書いているんです。



んじゃまた。




▼▼▼



【こっちもおすすめ】

noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




依頼こなし日記 2019.5/27-6/3  ~ふたつの校正
https://t.co/4HS4nocxl2

依頼こなし日記 2019.6/4-7/10  ~思考ロックとメッセージ
https://t.co/MQXeJxDevv



2019年1月のオレの短歌とその余談  ~「おもらしクン」「大きなSNSの下で」ほか
https://t.co/XQaZ8NGI0y

2019年2月のオレの短歌とその余談  ~文体そのものが行為になり得ている
https://t.co/Y6OCQ0tyUY

2019年3月のオレの短歌とその余談
https://t.co/GjAJRlbjWL




などなど、
500円ですべての記事(約120記事)が読めます。よろしければどうぞ。




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『ねむらない樹』vol.3で「歌人の一週間」を書きました!

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8/1発売の短歌ムック
「ねむらない樹」3号の
「歌人の一週間」
というページに文章というか日記が掲載されています。よろしくお願いします。




千文字程度で、5/6-12の一週間のことを書きました。

短歌を二首引用しました。

悲しみを書きました。

見間違いをしたことを書きました。

検索したことを書きました。

読んだ本のことを書きました。

血まみれになった体験を書きました。

見た動画と見なかった動画のことを書きました。






オレの書いたのは1ページで、見開きの隣は本多真弓さんでした。お世話になっている歌人さんです。
オレと本多さんのほかには柳谷あゆみさんと高山由樹子さんが「歌人の一週間」を書いています。

高山さんのサッカーの話。
海外のサッカークラブを応援するのって、日常とのやりくりが大変そうですね。真夜中に試合があるし、それもあまり間隔を空けずにやるわけでしょう。トーナメントの場合は特に気が抜けません。同点で試合が長引くこともサッカーではよくありますよね。

オレは、ワールドカップのたびにテレビで見れる全試合を見ようとするんですが、面白いけど大変です。四年に一度のことです。




「ぽつぽつ」というコラムのページの川谷ふじのさんのページに注目しました。
新人賞を同時受賞したので気にしている歌人さんであります。一緒に頑張りましょうね! と思っています(向こうがどう思ってるかは知りません)。

ダンスサークルで惨めな気持ちになったときに
「短歌研究新人賞を獲ったことを思い出して自分をなぐさめる」
というところは、自分のことかというくらい共感しました。
(顔面偏差値という言葉はつかわないほうがいいと思います)








そのほかのページはあとで読むつもりですが、映画と短歌の特集が今回のメインであります。

さっきからオレが言ってる「歌人の一週間」はサブというか、告知ツイートにもなかなか出てこない、予告にも入らないようなページであります。

『ねむらない樹』の内容は、前々からSNSなどで告知されていたんですが、「歌人の一週間」にオレが書いているということはなかなか告知されませんでした。
工藤吉生が一週間のことを書いてますよと細かいことを言ったところでムックの宣伝にならないというか、もっと注目すべきページがたくさんあるんですということなんでしょう。そしてそれは事実であります。二大特集にそのほかいろいろであります。
そこはまあ言ってもしょうがないので、できることをやっていきたいと思います。

さっきのサッカーだって、ポジションによってはいい加減にやっていいってことはありませんからね。どこに置かれたときも自分のなすべきことがあるならば全力でいくべきなんです。
オレはついつい脚光を浴びたいとか考えるんですが、目立たないところで良い仕事をする人をこそ見習うべきでありましょう。


っていうか、考えてみれば適材適所ですよ。

オレは1996年1月1日から欠かさずに日記をつけているくらいの日記人間です。(そんな言葉あるのか?)
ですので、今回とてもたのしく書けました。よいものが書けたと思います。

今回は自分にとって書きやすい自由なページをいただいて、楽しく執筆しましたし、素敵な雑誌に参加させていただいてとても感謝しています。

そうそう、巻末の執筆者紹介のところにプロフィールを書いています。






そんなわけで、
『ねむらない樹』vol.3
をよろしくお願いします。




上がったり下がったりゴタゴタしたような気がしますが、以上です。

んじゃまた。










プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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